もう一つの魅力、「戦略性」を演出する独自のルール
パラリンピック競技の中でも花形といわれる車いすバスケ。では、具体的なルールはどのようなものなのか。
日本人の多くは、細かいところまでは分からなくとも、一般のバスケットボールのおおまかなルールはご存じだろう。車いすバスケのルールも、車いすを使用すること以外はほとんど同じである。コートの広さ、ボールの大きさ、ゴールの高さも、もちろん同様だ。座ったままスリーポイントシュートを決めることも稀ではない。ただし、一般のバスケとは異なる特徴が一つある。それは、選手にクラス分けが存在することだ。
選手たちには障がいに応じて持ち点が設定されている。障がいが重い選手から順に1.0〜4.5点までのクラスがある。そして、コート内でプレーする5人の持ち点の合計を14.0点以内にしなくてはならない。このルールがあることで、障がいのレベルが偏らず、公平な条件でゲームが展開されることになるのだが、同時にこの持ち点制は、車いすバスケのもう一つの魅力である「戦略性」を演出する要素となる。障がいが軽い選手の方が身体の動かせる部分も多く、得点能力は高くなってくる。当然、相手はそうした選手を厳しくマークするわけだから、そこで障がいの重い選手がどれだけの働きを見せられるかが、勝敗のカギを握ってくるのだ。
車いすバスケを題材とした大人気漫画『リアル』の著者である井上雄彦氏は、こう語る。
「チームにはさまざまな障がいがある選手がいて、それぞれがそれぞれの役割を持ち、一つのチームを構成している。動かせる部分が限られるなかで、チームのためにどんなことをしているのか、どんな犠牲を払って戦っているのか。そういったものは健常のスポーツでもありますが、車いすバスケは、『チームプレー』という点がよりハッキリと見えてくる。そこが面白いところだと思います」
車いすバスケの男子日本代表の及川晋平ヘッドコーチは、車いすバスケの魅力をこう語る。
「選手たちの一生懸命な姿はヘッドコーチの僕が見ても感動できるぐらいのものなので、そうしたところは初めての方にも見てもらいたい。それに、非常に緻密に戦略を練ってゲームを展開しているので、バスケットボールを知っている方は、そうしたところも楽しめると思います」