自治体が障がい者スポーツに取り組む意義

 今大会には、千葉県内の人々だけではなく、鹿児島県伊佐市からも3人のボランティアが派遣された。伊佐市は2008年に他の市町との合併で発足した鹿児島県北部に位置する市だが、なぜそこからボランティアが派遣されたのかと思われるだろう。

伊佐市から派遣された鬼塚さん(左)、安樂さん(中央)、若宮さん(右)。それぞれ、車いすバスケの激しくスピーディーな戦いに魅了された
伊佐市から派遣された鬼塚さん(左)、安樂さん(中央)、若宮さん(右)。それぞれ、車いすバスケの激しくスピーディーな戦いに魅了された

 第一の理由は、車いすバスケをテーマにした大人気マンガ『リアル』の著者・井上雄彦氏の出身地だからだ。伊佐市の小中学校の図書館には、井上氏本人から『リアル』が寄贈されているという。そうした縁もあり、2014年8月には車いすバスケの男子日本代表が合宿を行った。その後、同市では市を挙げて日本代表を応援しているのだ。

 合宿を行ったことを機に、車いすバスケの魅力を知った市の職員は多いという。今回の大会にボランティアとして参加した伊佐市役所職員の安樂亮章さんは、「コートのモップ係をやった際に間近で見て、迫力に圧倒されました」という。今後の展開としては「また合宿地として誘致したり、車いすバスケの大会や体験教室などに取り組んでいったりできると面白いなと思っています。そのためにも、使いやすい体育館ができるといいですね」と語った。

 伊佐市の障害者支援施設「星空の里」から派遣された鬼塚ゆかりさんは、施設の利用者や職員とともにメッセージを書いたバスケットボールを日本代表に渡し、エールを贈った。施設利用者と日本代表選手たちをつなぐ役割も担ったわけだ。

 「これまで、私たちの施設と車いすバスケはそこまで身近ではありませんでした。けれど、今回私がボランティアに参加して、メッセージを贈ったりしたことで近づいたと思います。それが、施設利用者のみなさんにどんな影響を与えていくかが楽しみです」と、鬼塚さんは言う。

 そして、車いすバスケに関わることで、自治体にとっては気付きを与えられることもあったという。安樂さんと同じく、伊佐市役所から派遣され、2014年の合宿時には実行委員も務めた若宮健太郎さんが、その気付きについて教えてくれた。

「普段はほとんど意識していなかったんですが、車いすに乗った選手たちをご案内することを考えたとき、体育館にはちょっとした段差がたくさんあることに気付いたのです。車いすでも通りやすいように当て木をしたりしましたが、普通の体育館が、いかに障がい者の方にとって使いにくいものになってしまっているかを感じました。それからは、どんな方でも使いやすい施設にできるように、視点を低くして見るようにしています」

 当然ながら、バリアフリーというのは障がい者だけではなく、高齢者のためにも必要なものだ。バリアフリーについて考えるきっかけを与え、しかも関わる人々に競技としての楽しみも与えることができる障がい者スポーツに自治体が取り組む意義は、数多くあると言えるだろう。