求められる「コアな存在」

 ここまで紹介したように、今大会のボランティアはみな、それぞれのやりがいと意義を感じながら活動をしている。その一方で、障がい者スポーツのボランティアには、大きな課題もある。

 その課題について教えてくれたのは、茨城県立医療大学に勤務する愛知裕子さん。彼女は、学生として同大学に在籍していたときに健常者として車いすバスケをプレーし、その魅力にはまった。現在は、東北地方の女子選手たちが結成した「SCRATCH」というチームのマネージャーを務める、車いすバスケ業界に身を置く1人だ。

愛知さんは、今大会ではリエゾンとして女子日本代表に従事。学生時代には車いすバスケをプレーするだけではなく、SCRATCHの立ち上げにも関わった
愛知さんは、今大会ではリエゾンとして女子日本代表に従事。学生時代には車いすバスケをプレーするだけではなく、SCRATCHの立ち上げにも関わった

「ライトなボランティアが増えることはとても大事なことです。ただ、今車いすバスケに関わって感じているのは、『コアなところで関わる人がなかなか増えない』ということ。そうした人が増えないと、せっかくライトなボランティアの方に手伝っていただいても指示を出すことができず、結局は現場が回らなくなってしまうんです」

 なぜ、コアな存在は増えていかないのだろうか。

「周知と普及の違いだと思います。今大会はメディアなどを使って『周知』はしっかりとやっていて、実際、多くのお客さんが観戦に来てくれています。けれど、一般の方々が観るだけではなく関わってみようと感じるためには、その前段階からの『普及』が必要になるんです」

 愛知さん自身、車いすバスケの普及活動も行っているが、周知が普及につながっていないという現実を感じているという。

 コアな存在を増やすためには、まず関わってもらうことが必要だろう。実際、今回話を聞いたボランティアの人々も、もともと車いすバスケに関わっていたわけではない。では、ライトな関わりからコアな関わりに昇華するためにはどうすればいいのか。

「実は、それはまだ模索している状況です。大学でも、車いすバスケに関わる人たちが増えていくためにはどういうことが必要なのかを研究しています。個人的には、車いすバスケという競技が好きなことと、関わっている人たちが好きだということ。でも、好きだけですべての人が続くわけではないですよね。だから、実際にコアな関わり方をしている人たちにリサーチをして、『なぜ、今コアな関わり方ができているのか』を探り、参考にしていきたいと考えています」

 車いすバスケに関わる最もコアな存在といえる日本車椅子バスケットボール連盟の職員たちも、実はその多くはほかに本業を持ちながら連盟の業務に従事している。しかし、コアな存在が、集中して業務に取り組むことができないと、競技力の向上も、普及の輪を広げることも難しい。この状況を発展させるために、愛知さんの研究が役立つ時が来ることを期待したい。