情報を身近に置いたらどうなるのか

 一方、今回展示しているアイテムのひとつ、「Serenbler(セレンブラー)」の開発を担当するデジタルフロント事業本部ソーシャルエコノミー推進室の吉村智史氏は、「超福祉展はスピーディな開発の現場として利用できる」と話す。

 セレンブラーは、0.7~0.8mm厚の電子ペーパーを実装したコーヒータンブラーだ。「IoTで身近なものに情報発信機能を実装させたらどうなるか?」をテーマに開発されたもので、もともとは飲食店でコーヒーを飲む際に利用してもらい、行動や時間に応じた情報、特に広告を表示することを想定していたという。

セレンブラーのイメージ。何度も形状を作り変えていて、現在はタンブラーというより紙コップホルダー的な形状のアイデア。ディスプレイは4.7インチ。BMP形式の静止画を順次流していく仕組みで、最短で0.6~0.8秒ごとに切り替えられるため、コマ送りの動画のように見せることもできるという(写真:富士通)
セレンブラーのイメージ。何度も形状を作り変えていて、現在はタンブラーというより紙コップホルダー的な形状のアイデア。ディスプレイは4.7インチ。BMP形式の静止画を順次流していく仕組みで、最短で0.6~0.8秒ごとに切り替えられるため、コマ送りの動画のように見せることもできるという(写真:富士通)
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 「飲みはじめて30分後にクーポンを出す、60分後におかわりを提案する。広告を出す。ユーザーの情報を取得しながら、その人に合わせた文脈で情報を提供するというものでした」(吉村氏)

 セレンブラーの名前は、偶然の出会いを表す「セレンディピィティ」とタンブラーを組み合わせた造語だ。その人の行動・経験に即して偶発的に情報を提示することで、提供価値を高めようとしている。リアルタイムの行動を測定するために温度センサー、加速度センサーなどを装備することも検討しているという。また、簡単なボタン操作で選択ができるインタラクティブな機能も備えており、表示に対するレスポンスを誘発することもできる。

 こうした機能を装備していくと、当初は予定していなかった利用シーンが見えてきたと吉村氏は話す。「ある企業では、これをワークショップに使う実証実験を行いました。例えば、同じテーブルについた相手のプロフィールを画面に出すといった使われ方です。ファシリテーターが、こっそり参加者の発言を促すのに使う、時間を意識させる表示、リマインダーの機能など、飲食店を離れて、オフィスに入るとさまざまな使い方の可能性が見えてきたんです」

セレンブラーの利用イメージ
セレンブラーの利用イメージ
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 超福祉展に出展する目的もその延長線上にある。「さまざまな来場者と一緒に、いろいろな使い方、商品のあり方を考え、作りたい」と吉村氏。「だから、これに使うんだという固まった見せ方はしないつもりです。要素技術を汎用性のある形でお見せして、自由に発想してもらいたい。そのうえで、将来誰もが当たり前に求めて使いたくなるものを開発するヒントを見出したい」

 今はタンブラーを使っているが、タンブラーの形にもこだわりはない。大きさ、形など、IoTに本当にフィットするものを超福祉展を通じて考えたいとしている。

 こちらも「人の状態がわかるIoT技術」と同様、要素となる基本的な技術を見せて、参加者と一緒に考えたいという姿勢だ。超福祉展を実験場として、またはアジャイル開発の現場として使おうとしているのだ。

 どちらも会場に展示し、模擬的に使用できるという。2人とも「ぜひ見て、実際に触って、何か気づいたこと、思ったことがあれば話してほしい」としている。超福祉展で活躍するのは障害者やクリエイター、行政ばかりではない。企業もまた未来を考えることができるのだ。そこでは来場者一人ひとりの発言が大きな力になる。これも超福祉展の正しい活用法の一つであることは間違いない。