マイクロソフトは障害者関連への投資拡大

 今回、ソフトバンクとマイクロソフトが初出展した。大手企業が障害者を強く意識したビジネスを展開していることが見えてくる。ESG投資が普及し、SDGs(持続可能な開発目標)が企業活動の指標として定着しつつあることも影響していると見ることもできるだろう。

ソフトバンクが出展した手話学習ソフト「ゲームで学べる手話辞典」
ソフトバンクが出展した手話学習ソフト「ゲームで学べる手話辞典」
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マイクロソフトの展示の様子
マイクロソフトの展示の様子
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 ソフトバンクは、2014年に発売した手話学習ソフト「ゲームで学べる手話辞典」を展示した。同社ではかねてスマホ利用におけるノーマライゼーション(障害者や高齢者などが持つ「違い」を包摂し、すべての人が同じように使える状況を目指す)を推進しており、手話学習ソフトもその一環で開発されたものだという。「ガラケーのサービスが終了し、スマホの利用が拡大する中、本ソフトのダウンロード数も増えている。超福祉展で認知を拡大し、さらに利用者を増やしたい」(担当者)。

 一方、マイクロソフトは「Microsoft Seeing AI」、「Microsoft Office Lens」「Microsoft Accessibility on Surface」を展示した。同社はかねて超福祉展に注目しており、ようやく展示がかなったという。背景には、現CEOのサティア・ナデラ氏が障害を持った子どもを2人育てていることを公言し、グローバル全体で障害者関連への投資を拡大している現状がある。今年7月には、障害者のためのAI活用を支援する助成制度「AI for Accessibility」を日本でも開始するなど、「障害者」がビジネスにおけるキーワードになっていることを感じさせる。

 超福祉に向けて、社会の潮目が大きく変わりつつあると感じさせたのが、福祉以外の領域からの参加が目立つ点だ。ハイデザインな杖「BONLABウォーキングステッキ」を展示する平成電子や、自走式車椅子「FA01」のヨシヅカシステムプロダクトは、もともと福祉とは縁がない企業だ。

 どちらも障害者と接触したことを契機に、それまでの事業ドメインとはまったく異なる福祉機器の開発に取り組んだ。また、オカムラの車椅子のようなオフィスチェア「ウェルツ セルフ」が示すのは、福祉を包括するような視点で商品を開発すると、非常に汎用性の高いプロダクトに仕上がるということだ。いずれも未来の超福祉のあり方を強く示唆するものと言えそうだ。

(左)の「BONLABウォーキングステッキ」(平成電子)は、シェル構造のグリップが、使用者の負担を軽減する優れたデザインの杖。(中央)は自走式車椅子「FA01」(ヨシヅカシステムプロダクト)。溶接レス、マグネシウム合金製、ユニット構造という特徴を持つ車椅子。(右)の「ウェルツ セルフ」(オカムラ)は、オフィスチェアというアイデンティティで車椅子的なるものを開発。すべての人にとって使いやすく、さまざまシーンで使える椅子となったという
(左)の「BONLABウォーキングステッキ」(平成電子)は、シェル構造のグリップが、使用者の負担を軽減する優れたデザインの杖。(中央)は自走式車椅子「FA01」(ヨシヅカシステムプロダクト)。溶接レス、マグネシウム合金製、ユニット構造という特徴を持つ車椅子。(右)の「ウェルツ セルフ」(オカムラ)は、オフィスチェアというアイデンティティで車椅子的なるものを開発。すべての人にとって使いやすく、さまざまシーンで使える椅子となったという
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2020年、その先の「超福祉」

 今回の超福祉展では、「2020年には超福祉展は役目を終えて終了する」という姿勢をより鮮明に打ち出している。

 そのひとつが、「2020年のあなたは何をしていますか?」という超福祉展からのメッセージだ。オリジナル企画展示ではこれまでの出展者・登壇者からのメッセージをモニターで流すとともに、事務局の思いを文章で掲出。バナーフラッグではミラー素材を使い、見る人が「自分を見る」というデザインにし、2020年以降の行動を喚起しようとしている。

 2020年に役目を終えた超福祉展はイベントとしては終了する。その後は日常的に街に実装されることをイメージしており、そのひとつの例として、悩みを相談したり、人と人をつないだりする「チェックインカウンター」を制作した。今回はそのチェックインカウンターを体験ツアーの受付として利用している。

街に実装された超福祉として「チェックインカウンター」をイメージし、制作した。これは土日の体験ツアーのチェックインカウンターでもある
街に実装された超福祉として「チェックインカウンター」をイメージし、制作した。これは土日の体験ツアーのチェックインカウンターでもある

 今回一番のメッセージは「混じり合う」ということかもしれない。バナーやパンフレットに使われていた超福祉カラーのストライプが、「混じり合っている」ことにお気づきだろうか。昨年まではくっきりとしたストライプだったが、今年のパンフレットではグラデーションになっている。ミラー素材のバナーもエッジに向けて赤や青がグラデーションを掛けてある。さまざまな人が混じった、本当のインクルーシブな社会が、超福祉展の現場から始まろうとしている。

超福祉展のクリエイティブメンバー。後列左から松岡一久氏(ピープルデザイン研究所理事)、広瀬郁氏(トーンアンドマター)、岡部修三氏(upsetters)、須藤シンジ氏、戸取瑞樹(MUZIKA)。バックは超福祉展のオリジナル企画展示。これまでの歴史を振り返り、2020年に向けたメッセージを展示している
超福祉展のクリエイティブメンバー。後列左から松岡一久氏(ピープルデザイン研究所理事)、広瀬郁氏(トーンアンドマター)、岡部修三氏(upsetters)、須藤シンジ氏、戸取瑞樹(MUZIKA)。バックは超福祉展のオリジナル企画展示。これまでの歴史を振り返り、2020年に向けたメッセージを展示している
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