2016年11月8日から14日までの1週間、渋谷ヒカリエで開催された「超福祉展」。昨年につづいて会場を飛び出し、“超福祉の日常”を渋谷の街に描いてみせた。渋谷駅ハチ公前広場では、ヤマハの次世代モビリティーを並べてのトークショー、渋谷駅近くの宮下公園ではヒカリエの会場で展示されていたパーソナルモビリティーなどの試乗会、「超人スポーツ」の体験会などが開催された。
ハチ公前でトークショー
ハチ公前広場で行われたトークショーに登壇したのは、ヤマハ発動機 デザイン本部デザイン推進部長の田中聡一郎氏、美術家・クリエイティブ・ディレクターの坂巻善徳 a.k.a sense氏、川崎市で地域創生に取り組むカワサキノサキ代表理事の田村寛之氏、2020年パラリンピック東京大会成功WTエクスパートチームの矢嶋志穂氏の4人。ピープルデザイン研究所代表理事の須藤シンジ氏の司会で、超福祉とクリエーティブ、デザインといった話題を議論した。
そもそもこうしたトークショーを渋谷駅前のオープンスペースで行うのは「まず知ってもらうため」と須藤氏。前半は「日本では障害者について知る機会がない」(田村氏)ことや、駅のエレベーターのように、ベビーカーや高齢者を含め本当に必要としている人が使いにくくなっている現状などを紹介。そして、こうした現状を変えていくためには、クリエーティブの力が必要ではないかと語り合った。
「僕らは、どうしても“破壊と創造”で、おかしいことを壊して、そこから何か新しいものを作ろうとしがちだけど、そうじゃないんじゃないか。イケてる新しい何かを作れば、手前にある不条理なものは自然に消えていく。それが本当のクリエーティブの力なんじゃないか」と須藤氏は話す。
そしてそのためには、一人ひとりが「日々の普通の生活がクリエーティブだと知ること」や、「複数の企業で連携すること」が大切だという意見が、田中氏、坂巻氏から出た。
また、トークショーでは矢嶋氏の発言をきっかけに、登壇者は「日本では、『アスリートとして』または『障がい者として』あるべき姿の“基準(スタンダード)”のようなものが強すぎる」という議論を交わした。
矢嶋氏によれば、「2011年当時、身体障がい者水泳の競技者としてS5クラスのバタフライで世界クラスの記録を持ちながらも、身体にタトゥーがあるために日本身体障がい者水泳連盟からロンドンパラリンピック出場権を得るための国際大会への出場が認められなかった。現在も、パラスイマーとしての活動ができないクラスの扱いになっている」のだという。
矢嶋氏は当時「(悔しさのあまり)ロンドン大会はテレビで見ることもできなかった」が、現在は「そういう世の中の在り方への違和感と戦う日々を過ごしながら、野田聖子衆議院議員が主導する2020年パラリンピック東京大会成功WTエクスパートチームで活動している」と話した。