PR

危機感を背景に模索が始まる

 これまでは、決してデジタルヘルス分野との接点が強くなかった製薬業界。その潮目が変わりつつある背景には、製薬業界が置かれている環境の変化があります。

 最近では慢性疾患に対する新薬が飽和状態で、「ブロックバスター」と呼ばれる製薬会社にとって継続的な収入源となる大型新薬が生まれにくくなっています。特許切れを迎える薬も多く、次世代薬の候補(パイプライン)も枯渇気味なのが実態です。さらに、国際共同治験や世界同時の承認申請が増えるなど、臨床試験の複雑さが増し、臨床試験に要する時間やコストが増加傾向にあることも、製薬企業の大きな課題となっています。

Medidata Solutions社が医薬品の臨床試験に活用する米Vital Connect社のウエアラブル端末
Medidata Solutions社が医薬品の臨床試験に活用する米Vital Connect社のウエアラブル端末
[画像のクリックで拡大表示]

 こうした危機感を背景に、製薬業界が模索し始めているのがデジタルヘルス技術の活用というわけです。例えば、医薬品の臨床試験支援を手掛ける米Medidata Solutions社は、ウエアラブル端末を活用して、臨床試験においてこれまで得られなかったデータを取得したり、試験効率を高めたり(コストダウン)しようとしています(関連記事)

 バイエル薬品は、「ウエアラブルデバイスやスマホのアプリなどを用いて、製薬会社として薬以外にも患者にソリューションを提供できる可能性がないか検討している」としています(関連記事)。患者の治療に寄与するという製薬会社としての本分は維持しつつも、そのツールは必ずしも“薬”だけではない、という流れになってきているのです。

 2014年11月に施行された「医薬品医療機器等法(薬機法)」で、ソフトウエア(アプリ)も医療機器の対象となったことで、今後は“治療効果を認められたアプリ”なるものも順次登場する見込みです。こうした流れも、患者の治療を本分とする製薬企業とデジタルヘルスを近付ける一因になっていると言えそうです。

 一方、薬そのものの価値を高めるため、ICTを活用しようとする動きも出てきています。2015年9月には、米国FDAがシリコン製のセンサーチップを内蔵した錠剤の新薬承認申請を受理しました。また、医薬品のパッケージに錠剤を取り出したことを検知する機能と通信機能を搭載し、服薬アドヒアランスの向上を狙う取り組みも出てきています(関連記事)