打ち出し角度は上向き10~14°

 ドライバー・ショットで飛距離を最大にするには、ボールを上向き10~14°で打ち出して、バックスピンは回転数を2200~2600回転/分(rpm)にするのが望ましい、といわれています。高校の物理の時間に、空気抵抗を無視した場合は45°の角度で投げると最も遠くまでボールが飛ぶと学習しました記憶がありますよね。しかし、バックスピンがかかって飛ぶゴルフボールは、進行方向に対して直角方向に揚力が働く、と考えます。ですから、進行方向が上向きすぎると揚力の向きは後方に傾くことになり、つまりブレーキとなって飛距離が伸びません。ゴルフにおいては、45°ではなく10~14°でボール軌道の高さと揚力の向きのバランスが最適になり、飛距離が最大になるのです。打ち出し角が小さすぎたり回転数が不足したりしているとボールは高く上がらず地面に早く落ちてしまい、逆に打ち出し角が高すぎたり回転数が多すぎたりするとボールは高く上がるものの、水平方向の飛距離を稼げなくなってしまいます。

 冒頭に、最近の研究ではディンプルを浅く、広くするとボールが高く上がることが分かってきている、と申し上げました。これは正確に表現すると、ボールを打ち出したばかりの速度の高いときに、浅く広いディンプルによる揚力が大きい、ということになります。しかしボールが最高点を超えるとボールの速度は低下して、30m/s未満になるそうです。この速度域では、浅く広いディンプルが必ずしも高い揚力を生むわけではありません。

 30m/s未満の速度域で揚力を確保するには、前述の浅く広いディンプルの間に、小さなディンプルを配置すると効果のあることが知られていて、そのようなボールも販売されています。ボールが最高点を過ぎると、進行方向は下を向きますから、直角方向に働く揚力は前方に傾き、ブレーキではなく速度を維持する効果を持つようになります。この段階での揚力を維持することは、「落ち際のひと伸び」につながるそうです。

 以上のようなメカニズムにより、ディンプルはボールを遠くに飛ばしたいゴルファーを大いに助けているわけです。そのボールを、より効果的にターゲットに向かって飛ばせるかどうかは、ゴルファーのスキルと用具の性能にかかってきます。次回は、ゴルフクラブとスイングのテクノロジーについてお届したいと考えております。

■参考文献
1) 宇治橋貞幸, スポーツ工学講義資料(東京工業大学).
2)「魔球の科学」, 『Newton』, ニュートンプレス, 2015年5月号.
3) 舟橋宗夫, 「ゴルフボールの慣性モーメント」, 『趣味ゴルフ工学  ( http://www1.bbiq.jp/tmfuna/ )』, 資料No.95-42.
4) 『ゴルフ豆辞典』, http://www.mamejiten.com/golf/ .
5) 川田宏之, 「機械工学とゴルフの深い関係」, 『JSME談話室「き・か・い」No.48』, http://www.jsme.or.jp/column/200609.htm .
6) 鳴尾丈司ほか, 「ゴルフボールのディンプルが空力特性に及ぼす影響」, 『シンポジウム:スポーツ・アンド・ヒューマン・ダイナミクス2014』, 2014年10月.
■変更履歴
図2、図3の出所表記を修正しました[2018/11/12]