アスリートの資質:謙虚な心が強さをつくる

 世界で活躍する水泳選手を診ていらっしゃる整形外科のドクターから、筆者のコラムへのご感想をいただきました。

 「テニスに関わるテクノロジーのお話、感銘しました。スポーツ医学も同じです。科学が関わりすぎるとスポーツの大切な部分を失ってしまいますので、いつもそのことは考えながら、バランスを取りながら接しています。壁にぶつかったときに、それを乗り越えるのに必要なのは医学的な知識や常識ではなくて、本人の強いマインドです。それがなければいくら速く泳げても国際大会で勝つことはできません。怪我や病気をしたときにはできるだけそういう強い気持ちを培ってほしいと考えながら接していますが、なかなか難しいところでもあります。教育が一番難しいです」。

 感想はまだ続きます。

 「マイケル・チャン氏が錦織圭選手に試合の前、基本の徹底的な反復練習を指示する、というコラムのエピソードも示唆に富んでいます。試合中の動作を不随意的な、automaticなものにしようとする働きかけのように感じました。大きな大会でのプレッシャーに打ち勝つのは強いマインドも必要ですが、何も考えなくても勝手に体が動いて対応してくれるような身体機能も重要と思います。大脳を介した反応では追いつかない、反射が必要なのかと思います」。

 「多くのアスリートを見ていて感じるのは、結局最後は脳の機能の違いなのかなと…。身体が小さいというハンデのある日本人が勝ち残るのは、神経系の機能が高いためと考えられ、一般の人からもレスペクトされるのかと思います。そういう機能に優れる人は、謙虚で人の言うことを素直に聞くことができ、教育に対するトレーナビリティも高いように思います。一流選手たちの多くはそういうパーソナリティを持っていたように感じます」。

 コーチを深く信頼し、その指導を受けながら、日々の努力を積み重ねる。それは決して簡単なことではなくて、謙虚な心がなければ成し得ないことなのだと思います。強さは謙虚さの裏返しであって、強くなければ謙虚になれないのかもしれません。これは競技自体の才能の他に、必ず持っていなければならない素質のように思えます。ドクターのご感想を伺えば伺うほど、改めてそう思いました。

 子どもを強いアスリートへ導きたい、と考える親ができることは、謙虚なマインドを持つ子供に育てること、それが最も大きな役割でないでしょうか。それには、自分の謙虚さがいつの時代で消えたのか、また一体いつ頃まで保っていられたのか、自分自身を内省してみるのも、大切かもしれません。