水着にまつわるルール改正

 以下は最近の水着に関するルール改定です。第2回で紹介した水着の変遷を表にまとめてみましたので、合わせてご覧ください。進化した水着の出現のあとにルール改正が行われていることが、お分かりいただけると思います。

2007年
 国際水泳連盟(FINA)は「北京五輪から、水着表面に(高速化のための)特殊な加工を施すことを禁じる」と決定しました。これにより「鱗入り」「突起付き」「ストライプ入り」水着は製造中止になりました。しかし、それまで不可だったラバーやポリウレタン素材の使用は認めました。
 もともと、水泳界のルールは施設や泳法に関するものが主であり、水着に関しては透けない、浮力を付けてはいけない、など大ざっぱなものでした。浮力についても数値の表記があるわけではないため解釈の幅が広く、ハイテク水着が規定に違反するかどうか、判断しにくい状況にあったようです。

2009年
 FINAは総会で「2010年1月1日からラバー皮膜やポリウレタン皮膜などの非透水性素材を使用した水着を全面禁止にする」とする新規定案を固めました。素材は布地製に限定されることになり、体表面のうち水着が覆っても良い範囲について限定されるようになりました。北京五輪のレーザーレーサーがあまりに強かったからでしょう。

2010年
 この年1月1日からFINAが国際大会に導入した、水着に関する新規定は以下のようなものでした。

1.水着の大きさは、男子はへそを超えず、ひざまでとする。女子は肩からひざまでとする。
2.重ね着は禁止。着用できる水着は1枚のみ。
3.水着への張り付けは禁止。
4.素材は繊維か編物のみ。素材の厚さを最大0.8mmで、浮力の効果は0.5N(ニュートン)以下。通気性(空気の通過率)は毎秒80L以上。
5.ジッパー禁止
表1●東京五輪から歴代オリンピックと水着のまとめ
年代オリンピック開催都市水着の特徴
東京以前(絹製の水着)
1964東京ポリアミド(ナイロン)100%の「トリコット」ニット生地。フィット性に欠け、抵抗低減は不十分。
1968メキシコ素材に変化なし、立体的に裁断縫製。
1972ミュンヘン素材・カッティングに大きな変化なし。バックセンター切り替え、桜プリント。
1976モントリオールポリウレタン弾性糸開発(ナイロン80%・ポリウレタン20%)。タテ・ヨコ2方向への伸縮性をもつ「2ウェイトリコット」素材を採用。
1980モスクワ(日本は不参加)
1984ロサンゼルスハイレグ導入。背中を開け、水抜きに注力。日の丸ワッペンがロゴプリント。
1988ソウル水の抵抗対策を本格化。アクアピオン開発、素材の表面平滑化に注力。
1992バルセロナアクアスペック開発、さらに平滑化を追求、ハイレグの位置をより高く。アクアピオンに採用されたナイロンよりやや太いポリエステル繊維を採用、熱プレスで表面加工。
1996アトランタ抵抗低減をさらに追求したアクアブレード開発。表面にプリント加工することで、縦渦を発生。摩擦抵抗の低減効果と整流効果、受け部の抵抗削減。
2000シドニー“サメ肌”水着「ファーストスキン」誕生。フルボディスーツ流行。
2004アテネ3Dボディースキャナーでスイマーの体形を細かく測定し、「ファーストスキン」をより進化させた(同FS2)。
2008北京「レーザーレーサー」が猛威。流水抵抗値を軽減させ、金メダリストの94%が着用。
2012ロンドン姿勢を維持するのに重要な骨盤サポートによる体幹安定。フラットな姿勢のサポート。
表2●競泳水着変遷の歴史
<素材><スタイル>
・ナイロン100%ニット素材
・ストレッチ性の追求 ・フィット性の追求
・表面摩擦抵抗削減 平滑化・抵抗削減+動きやすさ=生地面積減少
・表面摩擦抵抗削減 撥水プリント・サポート力→膝丈
・表面摩擦抵抗削減 リブレット構造・体型補正+形状抵抗削減=フルスーツ
・軽量・薄地・ハイパワー=織物へ・姿勢保持による低抵抗+推進力