泳ぐ生き物と、人間の水泳

 水着についての解説を終えるに当たって、水着と生き物の関わりから話題を1つ紹介したいと思います。

 前回、サメの肌にヒントを得て開発された水着についてお伝えしましたが、このように生物から学んだテクノロジーを「ネイチャーテクノロジー(生物模倣技術)」といいます。新幹線(JR西日本)ではかつて、空気抵抗を減らすためにカワセミのくちばしの形を参考にしたり、パンタグラフの騒音を抑えるためにフクロウの羽のしくみを応用したりしたことが有名です。他にも、服にくっつくオナモミをヒントにしたマジックテープ、水を弾くハスの葉の表面構造を真似た雨具などの撥水製品も知られています。カタツムリの殻には表面に汚れや油を弾く構造があり、油汚れを防ぐコーティング技術はここから開発が進められてきたそうです。

 家庭電器製品でも、ひまわりの種の配列を応用した扉ガラスで洗濯ムラを低減させたドラム式洗濯機や、トンボの羽の断面形をファン形状に採用して騒音をおさえた空気洗浄機など、挙げればきりがありません。生きものを真似て誕生した製品が身近なところに、たくさんあふれていることに驚きました。

 泳ぎは、水中を速く進む生き物の専売特許ですから、競泳のためにそれらの生物を研究し、真似しようとするのは理に適っております。が、人間と違って、彼らは生きるための純粋な行為として泳いでいるのに過ぎません。莫大な研究費をかけて追いつこうとしている人間の姿は、彼らにはどう映っているのでしょうか。

 一度、よく話を聞いてみたいものです。

■参考文献
日本オリンピックアカデミー編, 『オリンピック事典』, 三栄社, 2008年. 城島栄一郎他, 「水着と競泳記録の関係」, 『実践女子大学生活科学部紀要』, 2011年. 松崎 健, 「競泳水着における表面形状と抵抗」, ミズノ. 佐藤次郎, 「東京五輪1964」, 文春新書, 2013年. 競泳水着クラブホームページ, http://plaza.rakuten.co.jp/dressing/.