写真判定で100分の1秒まで計時

 東京五輪からは写真判定が導入されました。手動でも記録を取っていましたがあくまでも参考扱いで、写真判定が優先でした。タイムは100分の1秒まで読み取り、四捨五入します。例えば、10.14は正式掲示では10.1、10.15は10.2となっていました。東京五輪以降、現在は100分の1秒単位の値をそのまま表示するようになりました。

 当時の写真判定は、現在のものとは大きく異なります。スリット(細い隙間)を通してフィルムを巻き続けながら撮影するスリットカメラを用いてフィニッシュラインを通過する競技者を記録し、このフィルムを現像します。それから競技者のトルソー(胴体部分)がフィニッシュに到達したタイムを、競技者とともに写し込んだ100分の1秒相当の目盛りから読み取ります(図2)。そのため、結果を確定するのに多くの時間を費やし(当時は1分くらいかかったそうです)、観客への告知は非常に遅くなりました。

図2 東京五輪男子100m走決勝の判定写真
図2 東京五輪男子100m走決勝の判定写真
写真出所:陸連時報 第136号、1965年3月15日、野﨑忠信「1964年東京オリンピック大会コレクションと資料」所収
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 現在は、デジタルカメラで撮影するためすぐに画像を確認でき、タイムはコンピューターシステムの画面上でカーソルをトルソーに合わせるだけで得られ、同時に掲示板に表示されます。もし100分の1秒単位で同タイムの場合は、画像を拡大して1000分の1の目盛りまで読みます。計時が同着同タイムでも着順に差がつくことがあるのは、このような理由によります。

 タイムに関する余談ですが、明治時代は1位だけ計時し、2位以下はタイムを計らなかったそうです。予選は、昭和30年代前半ですら3位までしかタイムが残りませんでした。現在は、当然のこと全員を計時しています。

 一方、着順を見る決勝審判員は、1位だけを判定する人の他、1位と2位を判定する人、2位と3位を見る人というように、審判員1人が競技者2人を見ます。各競技者については、審判員3人の目が届くように分担します(表1)。

表1●決勝審判員の分担表
6着までの競技者は、3人の審判員が見る分担になっている。
1着2着3着4着5着6着7着8着
1審判員 主任
2審判員 A
3審判員 B
4審判員 C
5審判員 D
6審判員 E
7審判員 F
8審判員 G
9審判員 H
10審判員 I
11審判員 J
12審判員 K

 写真判定が採用されたことにより、フィニッシュ地点では順位にはトラブルがなくなりました。しかし、写真判定は費用が掛かります。東京五輪以降、大きな大会は全て写真判定を使っていますが、小さな大会は手動計測を用いている場合もあるそうです。それでも、現在は100分の1秒単位で判定しないと正式に公認されません。

 東京五輪以前と以後で変わった技術は、ここまでお伝えした号砲、記録判定に関する技術の他に、もう1つあります。出場人数が増えたための苦労があったのです。次回は、これにまつわる東京五輪での工夫について解説したいと思います。

参考文献
野﨑忠信,「1964年東京オリンピック大会コレクションと資料」.
■変更履歴
・図1、2のキャプションで引用表記を修正しました。[2018/11/12]