電動連発式信号器を日本が開発

 その後、日本は世界でいち早く、電気を応用した電動連発式信号器の作製を試み、正式の競技会で使用するようになりました。その後、火薬を使用せず電子音を用いた装置も開発され、日本は1985年神戸ユニバーシアード大会において採用。世界での初採用はこれよりもかなり遅れ、1995年イエテボリの世界陸上でした。現在も、小さい競技会などは火薬を使用しており、電子音と併用されています。

 具体的には、ピストルが信号器に変わったのです。一見ピストルに似ていますが、ピストルのような形をしているだけで、スイッチに過ぎません(以下「ピストル」と表現します)。結局スターターはスイッチを押す役割になったのです。

 電動連発式信号器の仕組みを簡単に説明します(図2)。ストロボ付きのメインピストルと、4台の信号器(サブピストル、1~4号器)を接続します。メインピストルが内蔵するスイッチによって、信号器が内蔵するソレノイドに通電する仕組みです。信号器のうち1号器には、フラッシュとVTRを作動させるためのスイッチもあり、ソレノイドに連動しています。

図2 電動連発式信号器の仕組み
図2 電動連発式信号器の仕組み
スターターが引き金を引くとスイッチS1が閉じ、1号器のソレノイドに電流が通り、フラッシュのスイッチS2とVTRのスイッチS3が閉じる。元図版出所:野﨑忠信「陸上競技用スタート信号装置における開発の経緯について」図4(作図は横倉三郎明星大学教授)、明星大学研究紀要ー人文学部ー第24号、1988年3月20日、野﨑忠信「退職記念講演資料」所収
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 メインピストルの引き金(現在は押しボタン)を引くとスイッチがオンとなり、1号器ではソレノイドの動作によってフラッシュとVTRのスイッチがそれぞれオンになります。各信号器には、4kg重の力で叩くと爆発し、音を出す火薬が入れてあります。メインピストルには火薬は入れません。

 電子音を使うシステムでは、この火薬をスピーカーに変えただけで、大きなシステムの違いはありません。ただし費用が高く、設置が大規模になります。

 信号器(1~4号器)の配置は、400m走や4×100mリレーの場合、図3のようになります。各競技者からは、最寄りの信号器からの距離が一定になります。

図3 400m走、4×100mリレーでの信号器の配置の例
図3 400m走、4×100mリレーでの信号器の配置の例
青丸はスターターが立つ位置。元図版出所:野﨑忠信「陸上競技用スタート信号装置における開発の経緯について」図6、明星大学研究紀要ー人文学部ー第24号、1988年3月20日、野﨑忠信「明星大学情報学部教授 退職記念講演資料」所収
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 余談ですが、曲走路において内側のラインは誰のテリトリーでしょうか。2レーンの内側のラインは、1レーンのものでしょうか、自分のものでしょうか。答えは、1レーンのものです。2レーンのものではないため、踏んだら失格となるのです。厳密にはルールでは、2レーンの選手は内側の線にギリギリまで近づいてもよいですが、踏まないように走らなければ失格となるのです。

参考文献
野﨑忠信,「明星大学情報学部教授 退職記念講演資料」.
■変更履歴
・図2、3のキャプションで引用表記を追記しました。[2018/11/22]