曲がりが戻るタイミング

 そして最も重要なポールの特性は、戻りが速いことです。戻りが速いとは、ポールに蓄積されたエネルギーを短い時間に一気に解放することです。ポールの剛性が高いほど、ポールの固有振動数が上がって戻りが速くなりますが、鉄製ポールのように堅すぎると、振動数が高くなりすぎて、まだ戻ってほしくないタイミングで戻ってしまいます。

 アスリートの能力により、戻りが欲しい瞬間、必要なタイミングは各々異なります。グラスファイバーを使うと、さまざまな硬さ、重さ、長さ、太さのポールが設計できるので、各人に合った「戻り」を求めることが可能になったわけです。

 グラスファイバー製ポールの持つ以上の特性によって、他の材質のポールより人を高く上昇させることができた証拠として、ある数字があります。専門用語で「抜き」と呼ばれる、握りの位置から、飛び越したバーの高さの差を表す数字です。グラスファイバー製ポールでは、金属製ポールより20~40cmも高い「抜き」が可能になったのでした。スチール製との差は最大で99cmもありました。

 もちろんグラスファイバー製ポールにも、メリットだけでなくデメリットもあります。どのポールにも、曲がりやすい面(軟らかい)と曲がりにくい面(硬い)があり、曲がりにムラがあります。跳ぶ度に曲がる方向が違ったり、予期しない方向に跳ね飛ばされたりして、跳躍不足や危険な跳躍につながります。しかしこれは、徹底的なトレーニングを積み重ねてポールのクセをよく知り、同一方向に安定して曲げられるようにポールを握ることで克服できます。

 またグラスファイバーは、気づかないうちに劣化していたり、気温により変化したりする可能性があります。調子の悪い時の対処法がない(金属製なら握りを下げるなどして対応できる)という不利な面がありますが、これらは工学的な専門家の課題ではないかと思います。