廉価版でも安全性能は落とさない

 このように、一地方にある中小規模の企業の製品が、国際的にここまで認知されているのはなぜでしょうか。同社自身によれば、「安全性・公平性」と、それを支える「強さ」といいます。

 「安全性」はともかく「公平性」とはどういう意味でしょうか。アライヘルメットの製品は、安価なものは約2万円台からありますが、プロのレーサーが使うような高価な製品もあり、上限はキリがありません。ところが、価格によってヘルメットの安全性能に差を設けてはいないのです。平等・公平であること、これがAraiのキモです。

 ヘルメット(乗車用)の安全規格には「SNELL規格」とJISがあります。アライヘルメットは安価な製品でも必ず両方に適合させていて、どちらか1つにしておくといった差はありません。「お金の差で命に差ができるのはおかしいだろう」、というのがバイク乗りである新井社長のポリシーだからです。

 公平性は、「スペシャルを作らないこと」をモットーとしていることにも表れています。これは誰のヘルメット、と最初に決めて造り出すのではなく、全て同じ作業を経て出来た数多くの製品のうち、たまたま最終的な工程で塗料を吹き付ける名前が有名ライダーであるのに過ぎない。造り手が特別な意識をもって製品を差別しないように、どの製品を取っても同じ品質を保てるようにするためのこだわりです。

 繰り返しになりますが、Araiは、衝撃吸収性においては世界一厳しいといわれるSNELL規格と、JISの両方の規格をクリアしています。

 アライヘルメットという会社のバックボーンは、私見ですが社長自らがバイク乗りであることに尽きると思います。ライダーにはリスク対応能力が不可欠であり、そのアシストとして必需品であるヘルメットがどうあるべきか、誰よりも切実に感じている。分かるからこそ、ヘルメット造りに人生を懸け、自分も含め人の命を守ってナンボ、というぶれない使命感を持ち続けられる。アライにはそんな社長を慕うバイク乗りの社員が多く、使命感と情熱を同じ温度で共有できるというアドバンテージを生み、その結果が商品の品質に反映されるという、理想的なループがあるようです。