“丸さ”で衝撃に対処

 よりリアルに命を守るためには、直接的な変形や破壊などで吸収しきれない衝撃にも対処しなければなりません。そこで生まれたのが“かわす”発想です。ヘルメットが滑らかな形状であれば、滑ったりころがったりすることで、帽体の多くの面で衝撃を吸収できる、それを“かわす”性能といっていて、それに最適な形は丸くて突起状の部分がない卵型となるのです(図3)。もし角張った形状であれば、路面や障害物に衝突したときに引っかかって大きな衝撃をうけたり、ライダーの首をひねったりと、危険度は非常に増します。

図3 滑らかな形状で衝撃を“かわす”
図3 滑らかな形状で衝撃を“かわす”
衝撃の吸収に寄与する面積を実質的に増やす
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 以前、英国にR75という規定がありました。「曲率半径75mm以上の連続する凸曲面で構成せよ」という規定で、日本でも以前存在していましたが、2010年に諸事情のため消滅しました。しかしアライは現在でも重要であるとして、今も社内規格として存続させています。

 ただ、アライは物理的理論や数字にこだわっているわけではありません。新井社長や社員がバイク乗りとしての感覚で、仮に自分が事故に遭っても助かりそうなヘルメットとは何かを追究していった結果、たどり着いたのがたまたま卵型やR75だったというわけです。 ライダーであれば誰でも一目でAraiと分かる、トレードマークともいえるずんぐりむっくりのフォルム。米国に初めて渡ったとき、「地味で重くて高い」とバカにされたこの形こそが、アライの努力の結晶であり、同社を世界一に導いた理由だったのです。

 Araiのユーザーは安全性だけで選んでいるわけではなく、ヘルメットのフィット感やかぶり心地、内装の素材の工夫、通気性、重心バランスなどにも高い評価を得ています。現在でもヘルメットには軽さが重要と考える人もいるでしょう。しかしアライヘルメットは軽いことより安全性を重視すると同時に、多くの人の頭にいかにフィットするかが重要と考えてきました。フィットしないと、風圧でのリフティングにより、かえって重く感じる現象が起こるそうです。

 以上がアライのヘルメットの主な特徴ですが、そのようなヘルメットを生み出すに至った経緯を、日本の社会的背景の変化も含めて、次回以降にお伝えしたいと思います。