スマホ決済で前払い

 同社が取り組む前払い型プランの改善点は他にもある。それが、スマートフォン(スマホ)で料金を決済可能とする「スマートPAYG+」だ。

 ビッグ6などによる従来の前払い料金プランでは、ユーザーは自身の口座残高がゼロになる前に、電気料金の前払いを受け付ける特定の店舗などで口座のチャージカードを購入する必要があった。このため、それらの店舗が閉店してしまうと、電気代が未払いとなるため夜中でも電気の供給が止められてしまう顧客が少なくなかった。

 OVO Energyによると、英国においては前払い料金プランの顧客のうち40%は、そのような経験を持つ。中でも25%の顧客に至っては、トイレで用を足したりシャワーを浴びたりしていた時に電気が消え真っ暗になってしまったという(図2)。

図2 英国で電気料金の前払い顧客が経験した、悪いタイミングでの停電
図2 英国で電気料金の前払い顧客が経験した、悪いタイミングでの停電
(出所: 英OVO Energyのプレスリリース)

 そこでOVO Energyは、わざわざ店舗に足を運ばなくても自宅からスマホの専用アプリによって電気料金の前払いを可能とする仕組みを構築し、顧客の利便性を向上させたのである。

 このような経営努力が功を奏し、同社は現在英国エネルギー市場の2.2%にあたる64万件の顧客にエネルギーを供給している。同社はこれまで新規参入を促進する施策であった優遇税制の恩恵を受けてきたが、今は新電力への優遇制度の対象から外れている。それでも、ビッグ6よりも安い料金を打ち出す戦略に変更はない。

 英国では、ビッグ6でも構造改革が進まない事業者があることから、OVO Energyなどの新電力各社が顧客を奪う流れが今後も続くとみられる。OVO Energyの事例は、顧客の抱える不便や悩みを解決すること、利息のボーナスといったメリットを提供することなどで、エネルギー事業に新規参入する企業が既存の大手企業と互角以上に渡りあえることを証明した。そのような意味で、英国の事例は日本における電力小売り自由化の展開で大いに参考となりそうだ。

この記事は日本経済新聞電子版のエネルギー分野のコラム「エネルギー新世紀」から転載したものです。