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 さて、Bloomberg社は、件の研究開発センターについて、外観からはApple社に所属している施設だということを見て取ることができない、と伝えているが、上海に研究開発センターを開設することが判明したときも、状況は今回の台湾のケースと似たようなものだったことを思い出す。

 2013年の年明け早々、中国メディアの一部が、上海の浦東地区の源深路にできた正体不明の建物が、実はApple社の研究開発センターなのではないか、と騒ぎ始めた。私はたまたま、それらの記事が出る数カ月前、散歩の途中に、まだ建築中だったその建物の前を何度か通りかかったことがあったのだが、デザインが、周囲の景観から浮いているバロック調だったこともあって、その建築物のことは印象に残っていた。あれがApple社の研究開発センターだったとは…。記事を読んで慌てて現地を再訪したが、なお工事が続いているようで建物は工事用のフェンスに囲まれ、人もおらず、Apple社のものだと分かるような手がかりもなく、すごすごと引き上げた。

 その後、中国の経済紙『第一財経日報』が2013年1月28日付で、件の現場に出入りしていた施工業者のある担当者を捕まえ尋ねたところ、実直そうなその担当者が、「Apple社との守秘契約があるから答えられない」と口を滑らせたため、Apple社の施設であることが分かったと報じた。現在、企業の登記を調べることのできる上海市政府のサイトには、Apple社の中国法人がこの建物の登記をしており、業務内容の1つとしてハードウエア・ソフトウエアの研究開発が含まれていることが記載されている。ただ、今回明るみに出た台湾の研究開発センター同様、上海の施設も、外観からは今なお、Apple社の施設であることは分からない。

Apple社の上海研究開発センターが入居する建物
Apple社の上海研究開発センターが入居する建物
手前の3棟が全てApple社の施設だが、外観からは分からない。
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 Apple社の研究開発センターといえば、同社は2015年4月、横浜綱島のパナソニック工場跡地にテクニカル・デベロップメント・センターを開設することを認めている。ただこれもそもそもは、安倍首相が衆院選さなかの2014年12月、「Apple社が最先端開発を日本でやることを決めた」と漏らし、これをApple社が後追いで認めたもの。発覚当時、内外のメディアは、「Apple社はいったい日本で何を開発するのか」「ベールに包まれた開発拠点」などと報じた。Apple社の研究開発センターの登場は、いつでもどこでもミステリアスなのである。