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 登録したのが12月9日だから、ちょうど3カ月になる。直営店では対処してもらえず、相談窓口に電話してから、もうそろそろ2カ月がたつ。それでもちゃんと動かないので困っている。A社が提供するスマホ向けの音楽関連サービスだ。

 自宅のパソコンに保存した全ての楽曲のデータを吸い上げ、クラウド経由のストリーミング再生で、手元のスマホでも聞けるようになる。以前から使ってみたかったサービスだが、対応できる曲数に制限があった。その枠が大きく広がったので、早速申し込んでみた。ところが、あるはずの曲がスマホの画面に表示されなかったり、曲名が出ていても再生できなかったりする。端末をリセットしたりサービスにログインし直したり、思いつく限りの手を試してみたが不発。最後の手段と、メーカーに泣きついた。

 その後、毎週のように対策を相談するものの、いまだに解決できていない。A社は、最初から伝家の宝刀を抜いてきた。いきなり提案されたのがハードウエアの交換だ。スマホだけでなくタブレットにも同じ症状が出たので、両方新品に換えてくれた。さすがに時価総額で世界一を争う会社は違う。おかげで問題は無事解決した。いや、音楽サービスの件ではなくて、実はもう一つあった方だ。データをクラウドにバックアップできない不具合は直ったものの、肝心の楽曲は相変わらず聞けないままである。

 思えばハードに問題が生じた際、修理の代わりにすぐさま新品に交換してくれるのは、筆者が知る限りA社が最初だった。当初はスマートな解決策に驚き、修理にこだわる日本メーカーの態度と比べる記事まで書いたほどだ。願わくばサービスも丸ごと交換してほしいところだが、どうもそう都合よくはできていないようである。バックアップができなかった時に、仮のアカウントを別途作ってもらったが、それでも問題は解決しなかった。かくなる上は、自ら対策を講ずるしかないのか。同様な使い勝手を実現する、別サービスを探し始めたところだ。ひょっとすると端末ごと別メーカー製に交換した方がいいのかもしれない。

 A社はスマホの使い勝手の良さで市場を席巻し、日本の携帯電話機メーカーを軒並み撤退に追い込んだ。ソフトウエアの出来の違いと筆者も世間も評したものだが、ネットワーク越しのサービスとなると、どうやら勝手が違うようだ。A社のクラウドサービスは、今とは別の名前だったころから、いくつも不具合を起こしていたと聞く。カリスマ創業者が5年前に発表した現行サービスも今ひとつパッとせず、相談窓口の担当者によればバックアップに難を抱えていたのは筆者だけではないようだ。業界に先駆けた音楽配信で躓こうものなら、長年のファン層の気持ちも離れて行きかねない。

 業績がすぐれない日本メーカーを、破竹の勢いだったA社などと比べて、何が違うのかを書いたことがある。会社の「DNA」が古いままでは、新しい市場に対応できないと結論付けた。ひょっとしたらA社も同じ穴に落ちたのか。IoTなどと騒がれるように、ネットワーク越しのサービスがモノよりも大事になる時代が来るとすれば、今度はA社が乗り遅れる番だろうか。

 先ほど出先で約束までの時間が気になり、A社のスマートウオッチに目を向けたら、画面が真っ暗なまま、腕を振ろうが、画面を押そうが一向に変わらない。「時計としても使えないのか」と呆れていたら、リンゴのマークが出て再起動が始まった。