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どう見ても業界関係者ではないのだが

 展示会場の中に入り、しばらく取材を続けていると、今度はちょっと様子が変な人に出会った。筆者が取材しているのは専門展示会なので、来場者は基本的にその分野の関係者である。出展者の部品を購入する立場の機器メーカーや、出展者を顧客とする素材メーカー、出展者の競合メーカーなどの業界関係者が仕事の情報を収集するために、展示会を訪れている。

 しかし、筆者が会場内で出会った“様子が変な人”は、明らかに違う。まず、身なりが全然違う。普通の来場者はスーツかそれに近い服を来ているが、その人の服は明らかに違う。また、仕事で来場している人は印象を良くするために身なりを清潔にしているが、その“様子が変な人”は身なりを清潔に保つことへの関心が薄いようだった。

 そして、その人はパンパンに膨らんだ紙袋を持っていた。紙袋の中には、出展者のカタログが詰め込まれている。しかし、仕事の情報を収集しているようには到底見えない。

 一体どういうことか。ここでも、中国人の同僚に聞いてみた。同僚は、「カタログを集めて業者に売り、お金に換えているのだ」と教えてくれた。いわゆる、ちり紙交換である。なんでも、カタログというのは厚くて重い紙が使用されているため、面積当たりの換金率が高いそうである。仕事の情報の収集ではないが、おじさんは、お金に替えられるものを収集する“仕事”をしていたと言える。

 筆者は出展者ではないので、おじさんに渡せるカタログは持っていなかった。すると、名刺が欲しいと迫ってきた。貪欲である。名刺にも良い紙が使われていることが多いので、換金率が高いのかもしれない。

 関係者には到底見えない人は、専門カンファレンスでも見られた。筆者が目にしたのは、カンファレンスの参加者だけが参加できるランチビュッフェの会場である。スーツに身を包んだ参加者が昼食をとるビュッフェ会場で、全く関係なさそうなお母さんと子どもの親子連れが思い思いに食事をしている。そして、食べ終わると、会場の外へ出て行った。あまりに堂々としていたため、筆者は何も言えなかった。

 なお、紙袋のおじさんの写真も、ランチビュッフェ会場の親子連れの写真も撮る勇気はなかった。ご容赦いただきたい。