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 東芝の不正会計問題に関連して、公認会計士の金子 智朗氏にここ数カ月の間、4本ほど寄稿していただいた。中でも、同社のパソコン事業が外注先への部品の“押し込み”で利益を水増した手法を詳しく解説した「最終報告書で明らかになった東芝PC事業の露骨な利益操作」は読者の高い関心を集めたようで、多くの方にお読みいただいた(寄稿へのリンク)。

 具体的な手法については寄稿をお読みいただくのが一番だが、ごく簡単に言えば、東芝のパソコン事業はパソコンを製造委託する外注先に、原価の数倍の価格で部品を有償支給し、完成品は「有償支給した部品の価格+実質的な外注費」で買い取っていた。このとき、期末に部品を有償支給して翌期以降に完成品を買い取ることで、利益を一時的にかさ上げしていたのである。

 ここで気になったことが1点ある。部品の有償支給による利益のかさ上げは、あくまで一時しのぎである。有償支給した部品を翌期に同じ値段で買い取るとしたら、有償支給によって期末に獲得した利益は、そのまま製造原価となって翌期の減益要因になってしまう。このコストをカバーしながら利益をさらに水増しするには、有償支給する部品の価格を値上げするしかない。

有償支給の部品価格は原価の5倍以上に

 これは、筆者が思いついた冗談ではない。実際に第三者委員会の調査報告書212ページを見ると、2008年度の有償支給では原価の2倍だった部品価格は、2009年度には2.2倍、2010年度には3.6倍、2011年度には4.2倍、そして2012年度にはとうとう原価の5.2倍に達している。パソコン関係の部品には単価が値下がりするものも多いので、単純に絶対額が5.2倍になったとは思わないが、それでも、さすがにそれ以上の値上げは外注先から拒絶されたようで、2013年度の部品価格は2012年度と同じ原価の5.2倍に落ち着いている。

 こうして2013年度(2013年4月~2014年3月)の東芝パソコン事業は、部品の有償支給による利益の水増しができなくなってしまった(原価の5.2倍で部品を有償支給して利益をかせいでも、その分は2012年度に原価の5.2倍で有償支給した部品の買い取りで消えてしまう)。これだけが原因ではないだろうが、第三者委員会の調査報告書303ページにあるパソコン事業の営業損益の推移を見ると、2012年度は(利益操作のおかげで?)かろうじて81億円の黒字だった営業損益は、2013年度は200億円の赤字に転落している。