新材料の積年の課題が解決へ
SiCではありませんが、「酸化ガリウム」の開発も2016年は進展しました。酸化ガリウムは、SiCやGaNよりも、高耐圧で低損失なパワーデバイスを安価に作製できる可能性があるとして、ここ数年、注目を集めている材料です。ただし、酸化ガリウムではこれまで、良質なp型層を実現するのは非常に難しいという課題がありました。その「積年の課題」の解決に道筋を付けたのが、ベンチャー企業のFLOSFIAと京都大学(工学系研究科 教授の藤田静雄氏や同科 助教の金子健太郎氏ら)のグループです(関連記事)。
酸化ガリウムのうち、同グループが手掛けるのは、「コランダム」と呼ばれる結晶構造を備えた「α型」。α型酸化ガリウムと同じコランダム構造を備えた酸化イリジウムで、p型層を実現しました。これにより、n型の酸化ガリウムとp型の酸化イリジウムによって、パワーMOSFETの作製が可能になるとみています。
本稿で取り上げた、ホンダのFCVや次期新幹線N700S、酸化ガリウムの成果については、それぞれの担当者の方に、2016年11月28~29日開催のイベント「パワーエレクトロニクス・サミット2016」にお話していただく予定です(詳細はこちら)。
加えて、同イベントでは、パワーエレクトロニクス全体の動向と課題、それらの解決に向けた技術ロードマップについて東芝三菱電機産業システム 取締役副社長の菊池秀彦氏にお話していただきます。日本電産からは、同社 中央モーター基礎技術研究所の初代所長で、同社 専務執行役員の福永泰氏をお招きし、「50円スパコン」を搭載した次世代モーターなどの同研究所の取り組みなどを紹介していただきます。
この他、SiCパワーデバイスの最新動向や標準化動向、パワーデバイスの市場動向などについて、各専門家の方に解説していただく予定です。みなさま、奮ってご参加ください。