現場とのかい離をどう埋めるか
ある事柄が大きく報道されたり、有力なキュレーションサイトで我々の記事が取り上げられたりした結果、ページビューが跳ね上がる現象を“~アタック”などと呼んでいます。この現象はがんの革新的診断・治療技術の記事に関して起こることが多く、一般読者を含めた関心の高さをその度に痛感します。
一方、プレシジョン・メディシンやAI、免疫チェックポイント阻害剤などを“夢の技術”のように捉える見方と、医療現場の受け止めにはかい離があるのが実態です。
国立がん研究センターが11月末に開始した、AIを活用した「統合的がん医療システム」の開発プロジェクト(関連記事2)。記者会見に登壇した同センター 研究所長の間野博行氏は、AIへの期待を語りつつも、がん医療はAI活用の「入り口に立ったにすぎず、それは(日本だけでなく)世界的にもそうだ」と指摘しました。いずれは「医師に代わってAIが診断・治療を担うのか」という報道陣からの質問に対しても、「AIはあくまでも診断・治療の提案をサポートする存在。最終的な判断は医師がくだす」と答えています。
一般消費者向け遺伝子解析サービスを手掛けるジーンクエスト 代表取締役の高橋祥子氏は最近の講演で、遺伝子解析サービスは「確実に拡大するが、確実に混乱する」と語っています(関連記事3)。プレシジョン・メディシンやAIについてもその応用は「確実に拡大するが、確実に混乱する」ことが予想される。その混乱から脱するためには、新しい技術やサービスの位置付けを正しく認識するリテラシーが、一般消費者にもメディアにも欠かせません。
現場と読者の認識にかい離があるとすれば、それを少しでも埋めることが重要な役割である点は、一般消費者向けメディアも、我々のようなBtoBを軸とするメディアも同じです。革新的な技術が社会でその真価を発揮するためにメディアが果たし得る役割は何か。過去の記事が思わぬ読まれ方をした今回の1件で、それを問い続ける必要を改めて感じました。