PR

 読者の皆さま、はじめまして。4月1日付で「日経ものづくり」編集長に就きました田野倉保雄と申します。はじめましてとは言ったものの、実は入社して最初の配属先が弊誌の前身である「日経メカニカル」で、5年間所属しておりました。その後、「日経エレクトロニクス」「日経ビジネス」「日経Robotics」を経て、このたび20年ぶりに“本籍地”に帰って来ました。原点&初心に戻り、魅力的で有益な誌面作りにまい進する所存です。どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、弊誌でも頻繁に取り上げるようになった話題の1つに、人工知能(AI)があります。技術者のみならず、一般の方々でも最近よく耳にする機会が増えているかと思います。そんな折、韓国は2016年3月、AIにまつわる「AlphaGoショック」に見舞われました。米Google社のDeepMindが開発したコンピューター囲碁プログラム「AlphaGo」と、韓国では知らない人はいないといわれている有名棋士との囲碁対局で、多くの人々の予想に反して棋士が1勝4敗と惨敗したためです。対局が終わるとすぐ、朴槿恵(パク・クネ)大統領は国を挙げてAIの研究開発に注力するように指示。これを受けて、各省庁がさまざまな支援策を次々と打ち出しています。

 日経ものづくりの最新号(目次はこちら)の「数字で見る現場」では、「人が頭で考えるよりもよい設計案を、コンピューターが生み出すようになる可能性があると思うか」と読者の皆さまに問いかけてみました。結果の詳細は誌面をご覧いただければと思いますが、「近い将来にそうなると思う」「遠い将来にはそうなると思う」の合計が 66.5%にも上り、回答者の約3分の2を占めました。AI技術などの進展に伴い、コンピューターが設計に好影響を今後与えるようになるだろうと考えているわけです。

 もしかすると多くの回答者が考えているよりも早く、設計が変わっていく可能性があります。というのは、最新のコンピューター技術の活用などによって、すでに「これまでにない設計」が施され、これまでにない製品がいくつか登場し始めているためです。最新号の特集1「これまでにない設計」では、その変化を捉えました。

 変化が起きている背景として、3Dプリンティングの進化によって造れる形状についての制約がなくなってきたこと、コンピューターの計算能力の向上によってより良い設計を追求するComputational Designが可能になりつつあること、IoT(Internet of Things)の発展によって製品の稼働状況の情報をリアルタイムで得られるようになり、結果をすぐに製品の改善に生かせるようになってきたこと、があります。これまでにない設計の具体的な事例として、人では設計できないラティス構造を備えたIoT自転車や、車体の空気抵抗を低減するフィン付きタイヤ、3車種にまたがる車体構造部品の板厚共通化と軽量化を検証した自動車メーカーの事例など、全部で8例をご紹介しております。

 そして、特集2は「化学物質リスク対応、待ったなし」です。2016年6月1日、改正労働安全衛生法の施行により、一定の危険有害性のある化学物質についてのリスクアセスメントが義務化されます。業種や事業規模にかかわらず、対象となる化学物質の製造や取り扱いをしている全ての事業者が対象になります。事業者はどう対応すべきなのか、などついて解説しました。

 また、今号から新しいコラム「GEウオッチャー」が始まりました。世界の製造業の関心を集めているものづくりの巨人、米General Electric社はどこに向かおうとしているのか。その動向を継続的に追っていきます。第1回のタイトルは「IoTでものづくりを抜本から変革、『結果にコミット』で勝負」です。Industrial Internetの導入に動いている日本企業との取り組みなどをつまびらかにしました。詳細はぜひ本誌をご覧ください。