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 この他に同期間で読まれた「技術経営」サイトの記事で目立つのが、イノベーションに関するものです。2位はイノベーションは、誰でも起こせる、4位はイノベーターは、愛される変人であれでした。

 両記事とも新コラム「イノベーションの幸福学」に掲載されたもので、慶應義塾大学大学院の前野隆司教授が担当しています。同教授は、超音波モーターやロボットの触覚の研究だけでなく、「イノベーション教育」や「幸福学」など、幅広い分野でその才能をいかんなく発揮してきた方です。

 前野教授は「イノベーションは、誰でも起こせる」と主張します。「僕が考えているイノベーションは、世界を変えるような最先端の取り組みに限ったことではありません。誰でも思いつくような日常生活の中の疑問に隠れていて、何らかの変化をもたらすものはすべてイノベーションと考えています」と語っています。

 「億単位の年収を稼ぐような大きなものでも、目の前の仕事を工夫してボーナスが5000円増える程度でも、どちらもイノベーション」なのだそうです。例えば、いろいろな動物の能力を測るために「この木に最も速く登った動物が1等賞です」というテストだけで判断するのはおかしい。「クジラは負けて、サルが勝つ」という結果になる。このテストは平等ではありません。

 「人間の脳には1000億個の細胞があります。みんな、同じくらい複雑なシステムを持ってるわけですから、誰もが何らかの天才的な部分を持っていると僕は思います。ただ30年、50年と生きる中で、その天才的な部分を見つけられないままの人がたぶん9割くらいを占めているのではないでしょうか」(前野教授)

 このように個々人の天才的な部分に気付くヒントを読者のみなさまに提供するというのが、同コラムの狙いです。技術者としてだけでなく、イノベーション論や哲学も研究してきた前野教授ならではの、ユニークで洞察に富んだ考え方は、刺激に満ちています。

 前野教授は工学者なのに哲学や倫理学の研究も手掛けています。「それは世の中の全体を俯瞰して考えることが好きだったということもありますが、日常で感じたすごく素朴な疑問をそのまま追求してきた」だけだそうです。

 例えば、触覚について「人間には、どうして指紋があるのだろう」といった誰でも思うような疑問は、意外に誰も手を付けていないかったからです。幸せの研究についても、「どうやったら幸せになれるの」という誰もが思いつく素朴な普通の疑問を追い続けた結果が新しい研究テーマにつながりました。