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 前回は、ソフトバンクグループが英ARM社を約3.3兆円で買収する件について見解を述べた(関連記事1)。まったく予想されていなかった巨額の買収案件で、業界からの注目度も非常に高かった。このニュースが飛び込んできたのは7月18日。その興奮冷めやらぬ7月26日に、アナログ半導体大手の米Analog Devices社が同業の米Linear Technology社を約1.5兆円で買収する旨が発表され、業界を再び驚かせた(同2)。そして8月22日には、ルネサス エレクトロニクスに関するニュースも飛び込んできた。

 Analog Devices社によるLinear Technology社買収は、ソフトバンクの案件とは異なり、半導体メーカー同士のM&A。大型のM&Aは、昨今の半導体業界では珍しいことではない。ただし、Linear Technology社に関して言えば「買収の対象になることはあり得ない」と筆者は考えていたので、今回の発表には大変驚いた。同時に、アナログ半導体業界のM&Aが今後、産業界において極めて重要な意味を持つであろうことを改めて感じさせられた。

 Linear Technology社の2016年6月期決算は、売上高が前期比3.5%減の14億2400万米ドル、粗利益が同3.5%減の10億8000万米ドル、営業利益が同7.2%減の6億3400万米ドル、当期利益が同5.1%減の4億9400万米ドルだった。

Linear Technology社の業績の推移(同社決算資料を基にIHSが作成)
Linear Technology社の業績の推移(同社決算資料を基にIHSが作成)
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 低迷する半導体市況の中で減収減益に終わったものの、粗利益率では75.9%、営業利益率は44.5%、当期利益率は34.7%と、相変わらずの高い収益率を維持している。2009年、リーマンショックの影響で多くの企業が倒産に追い込まれた状況下でも、同社は75.4%の粗利率、42.5%の営業利益率を達成している。

 売上規模が10億米ドルを超える半導体メーカーの中で、これほどの利益率を上げる企業は他に存在しない。売上高や成長率でLinear Technology社を上回る企業はたくさんあるが、収益の安定性において同社は群を抜く存在だ。