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特定分野の専門家による英知を結集しても、確からしい未来予測はできない。かといって、専門家集団にジェネラリストを加えただけでも優れた予測チームにはならないだろう。大切なのは、協業の一体感を醸成することだからだ。では、どうするか。2025年までに起きる劇的な変化と未来像をまとめたレポート『メガトレンド2016-2025[全産業編]』(日経BP社)の筆者である川口盛之助氏は、ある手法を思い付いた。

 前回、未来を予測するうえで重要なのは、専門家によるスペシャリスト的視点だけでなく、ジェネラリスト的視点も備えるべきことを指摘させていただいた*1。さまざまな領域を視野に収め、そこで起こりつつあるさまざまな変化の「意味」を理解し、何がどのようなメカニズムでどの領域に影響を与えていくか、その結果として何が生まれるかを見通す目を持つことが、未来予測にとって極めて重要だと考えるからである。

 では、専門家集団にジェネラリストを加えさえすれば、たちまちいい予測チームができるのか。答えは否だろう。なすべきは分業ではなく協業で、その協業においていかに一体感を高めるかである。ジェネラリストが最低限の専門知識を習得しておくべきなのはもちろんだが、各分野のスペシャリストもあまねく、広い視点で捉えたトレンドについて理解を深め、全員がチームとしての「共通認識」を持っていなければならない。

 筆者が著した『メガトレンド』は、この「ジェネラリスト」の視点を提供し、未来予測に関わるチームに「共通認識」を提供することを目的としたものである。ここに示しているのは、各分野におけるトレンドの羅列ではない。領域横断的な視点で抽出した「未来像を決定づけるメガトレンド」である。

 この執筆に当たって悩んだのが、先に挙げた一体感の問題である。口でいうのは簡単だが、本当に一体感のあるチームが作れ、そこで理想的に作業を進めることが可能か。それを自らに問うてみたが、どうも「できる」という確信が持てない。

 そこで最終的には、それを究極的に実現する方法として「全部1人でやる」ことを決断した。特定の技術や業界に対する思い入れを排除し、「さまざまな分野の動向を調査し、課題と打ち手の関係を整理、人に伝えられるように要約、図式化する」という一連の作業を1人の人間の一つの頭脳内で完結させようとしたのである。

ありとあらゆる未来予測を集め年表に

 理屈から言えば、理想的な方法である。だが、それには致命的な欠陥があった。作業量が膨大になり過ぎることだ。

 既に該当分野の専門知識をふんだんに持つスタッフが集まって、それぞれ得意な部分を分担すれば、作業はきわめて効率的に進む。それをせず、さまざまな領域の専門知識を一から頭脳に注入し、さらには最近の動きをトレースしていく作業は、まさに地獄だった。

 しかもそれは準備運動にすぎない。それらの情報を横断的に見渡すことでメガトレンドという現象を発見し、その本質を理解することこそが目的なのであるから。