2003年時点で捉えた変化の予兆
ここで、SBIがかつて配信したレポートを使って、当時起きていた変化を見てみよう。
このレポートが書かれたのは2003年、米軍によるイラク侵攻が起きた年だった。小泉政権は郵政公社の立ち上げにこぎつけ、街にはSMAPの「世界に一つだけの花」が流れていた。2001年から東京を中心にサービスを開始したNTTドコモの携帯電話サービス「FOMA」は、この年までにサービスエリアを拡大し、翌年の「900i」シリーズ登場で本格的な3G(第3世代移動通信)時代が始まる直前だった。
「モブロギング」と題されたこのレポート*2は、このようにブログの説明が必要だった当時、早くも始まっていた「モブログ」という新しい行動を定義した後、「モブログが広く普及すれば、何らかの事件が起きたとき、(ジャーナリストに限らず)誰もがすぐに写真や意見をリアルタイムでインターネット上に公開できる」と説明し、変化の発展可能性と社会への影響について述べ始める。
レポートでは、当時既に先進的技術に通じたオピニオンリーダーとして知られていた伊藤譲一氏(現・米マサチューセッツ工科大学 メディアラボ所長)と、ジャーナリストのジャスティン・ホール氏との対談記事の内容を紹介している。ホール氏は、米紙『The New York Times』が後に「個人ブログの父」とまで呼んだ人物だ。
彼の意見は、モバイル技術が普及した未来で、コミュニケーションの自由を獲得した生活者が、「何のためにその道具を使いたがるか」を強く予見させる。
マーク・ザッカーバーグ氏らが米ハーバード大の学生向けにFacebookのサービスを開始したのが翌2004年、初代iPhoneによってスマートフォン時代の幕が開くのが2007年なので、その年までFacebookはパソコンからの利用が中心だったことになる。その後、Facebookが、日本語を含めて多言語対応を果たし米国外でも急拡大するのが2008年である。
それらすべてがそろう5年も前に、使いにくいガラケーやブラックベリーなどで新しい行動を起こし始めていたモブロガーたちは、かなりの先駆者だったといえるだろう。