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不眠対策、世界の市場は少なくとも2兆円に

 日本では、5人に1人が不眠を訴えている。仮に、体内時計の正常化が不眠の解決に貢献するという啓蒙が進み、年間1万円(睡眠誘導剤1日1錠1年分の支払い額)をサーカディアンリズム関連の不眠対策に用いるとすると、約2000億円の市場規模となる。体内時計の修復を意識した環境操作は、主に先進国において行われる。先進国の人口は12億人とされており、日本での人口比を考慮すると、不眠対策の世界市場規模は2兆円程度と推定できる。今後、新興国の中間層が増加すれば、先進国と同様の不眠対策を必要とする場面が世界で増える可能性がある。市場規模はさらに数倍に膨れ上がるだろう。

 では、どのように体内時計を調整するか。サーカディアンリズムの不具合は、活動が要請される時刻と、体内時計が規定する活動適合時刻とがずれることからもたらされる。よって、個人のサーカディアンリズムの位相を簡便に決定できる方法が求められるが、いまだ実用に至っていない。既に睡眠や血圧、血糖、心拍、自律神経機能、深部体温、ストレス、呼吸、筋電図、呼吸パターンなどの生理指標測定が可能な機器がある。これを用いて簡便にサーカディアンリズムを測定できる製品を開発すべきである。これらの機器は、当初は医療機関で使用されるが、ウエアラブル機器とスマートフォンアプリの開発によって、個人が日常的に自身のサーカディアンリズム位相を測定するようになるだろう。

 このほか、日中の戸外の照度に相当する5000luxが達成可能な光照射機器や、ブルーライトを照射する装置も既に販売されているが、より効果の高い照明を開発することが必要である。さらに、採光を改良して「サーカディアンリズムの乱れない住宅」も販売されるであろう(図2)。

図2 サーカディアンリズムのロードマップ(図:筆者)(日経BP社『テクノロジー・ロードマップ 2017-2026 <医療・健康・食農編>』)
図2 サーカディアンリズムのロードマップ(図:筆者)(日経BP社『テクノロジー・ロードマップ 2017-2026 <医療・健康・食農編>』)
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 体内時計をシフトする効果の高い青色光はエネルギーが高く黄斑変性症の原因になるとの報告もあり、黄斑部への照射は避けたい。幸いなことに位相変位に関連する光受容体であるメラノプシンは網膜の辺縁に主に存在する。従って、周辺視野のみに高照度光を当てることによって黄斑変性症の予防が可能である。眼球の動きを検知して、周辺視野のみに光を照射する装置の開発が急がれるところだ。今後は、中心視野のみブルーライトを回避できるコンタクトレンズや眼内レンズ、バーチャルリアリティー(VR)装置などを利用して体内時計を正常化する商品が現れるかもしれない。