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感動力の総和という考え方で国の魅力を算出する

 このようなロジックを積み重ねた結果、私は実際にこの作業に取り組んでみることにしました。この作業とは、さまざまな分野の才人たちの成績を網羅的に定量比較し、出身国別にその成績を整理することによって、各国の「クール度の総量」を導き出すという意味です。

 具体的には、まず、評価すべき才能の範囲を体系的に整理するところから手を付けました。次に紹介する「タレントマップ」では、まず才能の種類を大きく上段のパフォーマー系と下段のクリエーター系に分けてあります。

 パフォーマーとしては、心身を使いこなす能力を競うアスリートや演者たちが並びます。左側ほどタイムや得点といった量的な評価がしやすい種目で、右寄りになると美しさを競う感性の世界になっています。下段のクリエーター界は、美しい作品をつくり上げる人たちの世界です。扱う題材は数式や文章、画像や楽譜などのソフトだけでなく、料理や工芸品などハードまでさまざまありますが、こちらの世界では作者の創造した作品の出来栄えが評価対象となります。

図3 タレントマップ(筆者作成)
図3 タレントマップ(筆者作成)
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 まず全体を大きく14の領域に分類し、それぞれの領域において重要と思われる種目をリストアップして、世界選手権やらワールドランキングなどのデータベースを駆使して国別対抗戦を行ったわけです。領域のイメージが湧きやすいように、図の中には各界の名選手や大御所と呼ばれる偉人たちの名前をいくつか載せてあります。

 これだけ集めたドリームチームを想像すると、何でもできそうな気がしてきてワクワクしますね。この偉人リストを眺めているだけでも各国の得意分野は見えてきます。日本からもそれぞれ1人だけ最強選手のお名前を入れてありますが、日本代表がそのまますんなり世界選抜チームで活躍できそうな分野と、そうでない分野があることは一目瞭然です。

 実際にあらゆる分野での金メダルの数を集計してみました。ノーベル物理学賞から水泳世界選手権での金メダルの獲得数まで、バレエダンスの世界的なコンクールでの成績から料理コンテストでの成績まで、ビルボードの歌手のランキングからTEDでのプレゼンテーションの再生回数ランキングまで。対象とした分野は総計で114分野、調査したデータベースは350余りを綿密に洗いました。

 才能のカテゴリーを14の領域に分けたのですが、各領域の中には伝統的な競技から最新型のポップな種目までさまざまあります。視野を広くしてそれらをできるだけ均等に網羅することも大事なポイントになります。

 例えばダンスの世界ではクラシックバレエや社交ダンスの世界を伝統種目だとすると、その対極にはヒップホップダンスの世界が花開いています。そこでは5大世界大会と称されるイベントが催され、トップダンサーたちは世界を転戦してポイントランキングを競っています。

 オリンピックでも第1回大会からの長い歴史を持つ体操競技。この領域では近年、パルクールと呼ばれる新たな競技の注目度が高まっています。忍者のように塀や壁などの障害物をクリアする美しさを競うストリートカルチャーです。どの領域においても才能の受け皿としては今後この種のストリート系種目は存在感を高めていくことでしょう。

 このような伝統系とポップ系の関係はどの領域にも存在します。「ノーベル物理学賞の反対は何か?」「100メートル競走の対極は?」「カンヌ国際映画祭グランプリのポップ版とは?」と14領域で積み上げていった結果、結局114の分野を調べることになりました。

 あらゆる分野で都合よく世界選手権やポイントレイティングシステムが整っているわけではありません。時には選手の獲得賞金総額やウェブでのフォロワーの数などを用いて、工夫しながら、すべての分野の代表選手たちを定量的に格付けする作業を行ったわけです。こうしてタレントマップをぐるりと360度、各分野の超人たちの活躍を数値化して、全部足し合わせたその順位こそが、公正な目で見た「クールジャパン」の実態値というからくりです。才人たちの成績をグロス・ナショナル・タレント(GNT:Gross National Talent)という指標に変換して数値で比べられるようになりました。さてその結果はどうなったでしょうか?