課題先進国ジャパンの将来とは
詳細な結果は6月に上梓した拙著『日本人も知らなかった日本の国力(ソフトパワー)』(ディスカヴァー21)でたっぷり解説していますので、詳しくはそちらをご覧いただきたいのですが、一部要点をここに紹介いたしましょう。
前述のダンス分野の総合結果を一例として内容を紹介します。全身の身体能力を使いこなして美しさを表現する「ダンス」の領域を「体操系」「スケート系」「伝統的ダンス」と「ポップ系ダンス」の4分野に分けて、代表的な種目を総計9つ厳選して評価をしています。それぞれの種目で最も権威ある世界大会でのメダル数や、バレエ団員の国籍などを調べた結果をまとめて、一律占有率に焼き直したのが図4です。軽重をつけずに9種目の成績を平たく公平に足し合わせると、日本は世界で第7位のダンサー供給国として貢献していることが分かります。
このダンス界の最強国はロシアで、特に伝統系の種目で得点を稼いでいる様子も可視化されました。先日、英国のロイヤルバレエ団のプリンシパルに日本人が2人選ばれたことが話題になりましたが、世界の4大バレエ団に登録されているトップダンサーを国籍別にカウントすると、日本は第6位という結果が示されています。このようにして、広く14分野における超人たちの活躍ぶりを積み上げた結果がGNT(グロス・ナショナル・タレント)という指標になるというカラクリです。
- ・すべてを合わせたグロスナショナルタレント(GNT)で日本は総合力世界第5位
- ・GNT上位5カ国の感動力大国とはG5メンバーであって、GDPでも軍事力の順位でもない
- ・GDPとGNTの比較では、スウェーデンやスイスはGNT成績が抜群に良い成熟ブランド国
- ・逆にインドや中国、ブラジルなど新興国はGNTが未熟で、感動力では大国入りには程遠い
- ・日本は体格や言語がネックとなる多くの分野で苦戦を強いられるものの、あの手この手の工夫を凝らすことで、苦手分野にも活路を見いだしている
- ・最大の特徴は、領域の得手不得手にかかわらず、どの分野にも好奇心を持って取り組む姿勢
- ・先人たちも頑張ったが、今日の日本の若者たちはさらに幅広い分野で第一級の活躍をしている
- ・GNTの育成には世代単位の時間を要する。軍事や経済力育成より困難を伴う雅な世界
- ・ライフサイクルがさらに短縮する将来を考えると、後続国が追い付く難度は高まるだろう
- ・今後少子高齢化が進む日本だが、GNT視点で若々しく好奇心を持ち続け、活力を維持することが大事