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IoTはInternet of Things からIntelligence of Thingsへ

――IoT分野についても、日本は欧米に後れを取っていないとうかがいました。

 IoTは、様々な物体がインターネットにつなげるというものです。それにより、物体に組み込まれたセンサーが検知する状況、例えば光や温度、圧力、動作などの情報(データ)をインターネットを通じてクラウドやサーバーに収集し、AIを使ってビッグデータ分析するといったことが可能になります。クラウドやビッグデータ分析といったところに注目しがちですが、ここで重要なのはインターネットにつながった端末側が検知する光や温度、圧力、動作といった実世界の“アナログ”情報を“デジタル”情報に高い精度で変換したり、逆にデジタル情報をアナログ情報に変換したりする部分です。前者はA-D変換、後者はD-A変換といわれ、いずれも日本には技術の蓄積があります。

 ディープラーニングなど、AIは処理するデータ量が増えれば増えるほど賢くなり、より正確性の高い分析結果を導き出せるようになります。それには、実世界のアナログ情報を緻密にデジタル情報に変換することが欠かせません。

 IoT分野では今後、端末側に向けた技術開発競争が激しくなると考えています。中でも、端末側におけるコンピューティング能力を高めて、より多くのデータを処理できるようになっていくでしょう。それには、高い処理能力を誇る半導体チップを端末に載せる必要があります。

 IoT市場の拡大にしたがって、インターネットにつながった端末数は大きく増加していくでしょう。端末が検知した様々な情報をそのまま収集するのでは、インターネット回線がパンクしてしまいます。端末側でデータを処理し、クラウド側でのビッグデータ解析に必要最小限のデータ量に減らすことが求められるでしょう。AI分析などクラウド側で担っていた処理を端末側で実行するということも起こります。さらに、IoT機器を狙うサイバー攻撃の被害を最小限に抑えるために、端末側でセキュリティー対策を採る必要性が高まっていくはずです。それには、端末側のコンピューティング能力を高めることが不可欠です。

 IoTは、「Internet of Things」を略したものです。いずれ、InternetがIntelligence(知性)に置き換わり、「Intelligence of Things」(モノの知性化)となるでしょう。

――ソフトバンクグループは、英半導体設計大手のアーム・ホールディングスを買収します。ソフトバンクグループの孫正義社長はアーム買収の発表記者会見において、アーム買収の背景にはIoT分野におけるアームの潜在能力の高さがあったことを明らかにしました。

 孫氏はIoT分野の実体や今後を冷静に見極め、「半導体チップを制する者はIoTを制する」という結論に至ったのでしょう。IoTで覇権を握るにはプラットフォームを押さえねばなりません。IoT分野におけるプラットフォームの根幹を突き詰めて考えるとコンピューティングを担う部分となり、そこはまさに半導体チップの担当です。IoT分野で必要とされる半導体チップは、今後ますますコンピューティング能力増強が求められます。ARM買収で、ソフトバンクはうまいところを押さえましたね。

[日経電子版 NIKKEI style 出世ナビ 2016年9月10日掲載]