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 70年代の初期、シナリオ戦略立案の指導者の1人であるPierre Wack氏は、こうした傾向を持つ戦略立案を研究した結果、現在の組織が当たり前のように共有している世界観そのものに、既にその組織に慣性をもたらす危険性が内在していることに気づき、次のようなメッセージを残している。

「もしよりよい戦略的意思決定を下そうとするならば、われわれは、『世界はどのようにして動いているのか』に関するわれわれのメンタルマップ(意識の中にある理解の構成)そのものを変える必要がある」

 我々が学ぶべきこのシナリオプランニングのメッセージの持つ本質は、21世紀の現在にあっても全く色褪せていない。いや、情報伝達が指数関数的に加速し、変化の速度も高まっている今だからこそ、私たちはその意味をもう1度よく考え直す必要があると強く感じる。

課題設定に基づく外的環境の構造を理解する

 シナリオプランニングは、複数の未来感に照らして、実行しようとしている戦略の脆弱性を認識し、より安全性が高く、また魅力的な戦略代替案を創造して合意し、速やかな行動を促すための意思決定ツールである。

 とはいえ、現行戦略の総取替えを指向する組織は極めてまれだ。大方の組織はシナリオに描かれた未来の複数の可能性を共有し、可能な限り通念にとらわれない環境観察をすることで、実際に事業環境に生じた変化を文脈の中で捉えようとするようになる。その上で、迅速にその変化に対する対応を戦略的意思決定に反映する、柔軟性の高い組織運営を志すのである。

 図2は、私が属する米Strategic Business Insights社が、SRI Internationalから引き継ぎ、改良を重ねてきた、現在のシナリオプランニングのフローである。

図2:シナリオプランニングの全体像
図2:シナリオプランニングの全体像
(図:Strategic Business Insights社)
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 全体のプロセスは、重要な戦略的意思決定に影響を及ぼす重要かつ不確実な外的要因の構造的理解を目的に設計された、一連のブレーンストーミングで構成されている。シナリオ構築は、前段部分を指し、ここでは「コントロールできない外的環境の構造的理解(図中グレーの部分)」に集中した議論がなされる。