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完璧な未来予測などできない。技術においても同じで、進化のプロセスを完全に読み切ることはできない。前提となる社会情勢、政治情勢、経済環境が不規則に変化するからである。だから、未来予測をするだけでなく、当初予測が当たらないことに備えなければならない。では、具体的にどう備えるべきか。グローバル企業のコンサルティングなどで多くの実績を残し、英文レポート「『未来技術展望』シリーズ」(日経BP社)を発刊する米Strategic Business Insights社(SBI、米スタンフォード大学が設立したスタンフォード研究所をスピンオフした戦略ファーム)の高内章氏が、「未来に備える」ための基本的な考え方と実践方法を伝授する。

あなたの年初の計画は今?

 とかく世の中はままならないもの。例えば年初に立てた計画一つとっても、世の中で1年続いた計画がいくつあるだろうか。

 1週間に10万歩歩くと決めて意気揚々とまだ明けきらぬ公園を歩きだしたのは去年の今頃。春一番の吹くころには陽気に背中を押されて意欲も倍増、このままやりきる自信がついてきた。

 しかし、4月のある日、異動を命ぜられて突然忙しくなり朝の散歩ができなくなった某氏。5月の連休で何とか気を取り直したものの、梅雨を迎えたころには、すっかり仕事漬け。公園を濡らす雨も言い訳になり、ウォーキングシューズは靴箱にしまわれたまま。来週こそは、来週こそはという気持ちも徐々に失せ、夏にはうだる暑さに歩き始めたことすら忘れてしまう…。

 この季節、このような記憶が甦り、過去数十年にわたる自らの意志薄弱さを嘆く方も多いのではないか。でも本当にそれは、あなたの、いや、その某氏の性格の問題だけで片づけてしまって良いのだろうか。

 決して他人のせいにするわけではないが、世の中には、異動だけでなく、思わぬケガや、心を痛める大きな出来事など予期しない出来事がたくさん起きる。こうしたいくつもの不測の外的環境の阻害要因が行動の意欲を削ぎ、再起の機会を奪っていくことも少なくない。

 逆に思いもかけない旧友が走っていることをソーシャルメディアで知り、その友人から時間のとり方を学び取りやり方を変えられることもあるだろうし、朝の散歩をやめた分、1駅分を歩く習慣を取り込むこともできるはず。問題は、外的環境の変化に応じて当初の習慣を変更できなかった、戦略的柔軟性の欠如にこそあるのではないか。

 翻って、多くの人の行動やモノやコトが複雑に絡み合う事業環境を考えたとき、事はもっと複雑になる。実際、リーマンショックが及ぼした数々の変調や、経済成長の方向性を大きく左右し始めた気候変動の進展など、外的環境を不連続に変化させる大小の要因は日常的に訪れ、自らの戦略実行に直接、間接に大きな影響を及ぼしていく。それだけではない。急激な人口増加の100年から、坂を下るジェットコースターのような人口減少トレンドに入る日本では、今までの通念の多くが破壊されていくだろう。

 こうした荒れ狂う事業環境に翻弄される企画担当者は、藁をもつかむ思いで助けを求める。どこからか話を聞き、「どうやら『シナリオアプローチ』という方法があるらしい。これを使って未来を予測すれば、不測の事態にノックダウンされる危険が回避できるのではないか」と、淡い希望を抱いてSBI社の戸をたたかれる。

 ただ、残念なことに、一般に言う「未来予測」は「シナリオアプローチ」の目指すところではない。そればかりか、シナリオプランニングは、「未来を正確に予測することなどできない」と諦めた人たちがつくったツールだと知ったらどうだろう。実は、しばしばシナリオアプローチに向けられるこうした誤解こそが、これからお話ししていきたいことの出発点なのである。