産業界では既成事実なのに
2007年、ベンチャー企業が開発した「心電図トランスミッタ」が、初の2.4GHz帯(ISM帯)使用のワイヤレス医療機器としてPMDAの承認を得た。当時は、この機種に関しての認証基準さえ存在してなかったことから、クラスⅡの製品であってもPMDAによる承認申請の必要に迫られた経緯がある。
この世界最軽量の心電図トランスミッタの承認取得ができたことで、“400MHz帯・微弱無線”の足かせが取り払われたと解釈していた。電波法と薬事法(現・薬機法)の両立性を示すことによる、日本初の“脱400MHz帯”のワイヤレス医療機器となったのだ。
その後、各社・各製品に反映され、2.4GHz帯やその他の周波数帯を利用するワイヤレス医療機器が登場し、これが既成の事実となっていた。ところが、この状況が生体情報モニタ関連の認証基準には反映されない状況が続いていた。ここにきて、実情にマッチするように、法律が追いついてきたというべきかもしれない。
ISM帯などのさらなる展開分野
「医療用テレメータ」の縛りのない、ISM帯を利用したワイヤレス医療機器が海外メーカーにて製造されるようになって久しい。当然のことながら国内導入を試みる業者が現れたが、この「医療用テレメータ」問題により導入を見送った企業も多かった。これらは、固定観念から脱却しきれず、また問題解決を試みない事例でもあり、国内の医療技術の発展を妨げた一つの要因ともなった。
ワイヤレス技術は「通信」に留まらず、携帯電話の非接触充電に代表されるISM帯を利用した「給電」にも応用され、誰もがごく一般的に利用している技術でもある。この電波帯域を医療技術のために利用しない手はない。
例えば、エネルギーを搬送するのに適した周波数帯がある。今後の国内流通が期待されるが、ワイヤレス型のモニタ機能付きコンタクトレンズ「Triggerfish」(スイスSENSIMED社)や、日本では同じく外部から給電・回転制御などをするワイヤレス内視鏡「NORIKA」(アールエフ社)などがその代表例だ。
これらの機器は、外部からの給電により作動するバッテリーレスのワイヤレス医療機器であり、体内に残ったままのバッテリーの安全性などを勘案すると、これに代わる新たな医療機器として大いに活躍の場が期待できる。ワイヤレス医療機器のうち、遅れている分野を取り戻し、新たな無線通信技術と医療機器の融合によって、治療や診断技術の新たなる展開を願っている。
次回は、米国でのワイレス医療機器の事例を紹介する予定である。