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今回の日本発・国際標準発行の意義

 このような意味合いを持つ国際規格の歴史や特質を踏まえ、医療機器の分野で、日本発の先端医療機器・光線力学的治療機器がIECとして登録された意義について、その重要性を記したい。本来、特定個別製品についてISOやIECとして標準化する場合、国際的な合意が必須であり、その決定には国際会議をはじめ、登録各国の投票など長い道のりを経て採択される。

 今回、国際標準となった「光線力学的治療機器」は、PDT(Photodynamic Therapy)と呼ばれ、日本が世界に先駆けて実用化した製品。悪性腫瘍の組織にレーザ光を照射することで光化学反応を引き起こし、腫瘍組織を変性・壊死させる治療法だ。現在、薬剤とレーザの照射を組み合わせた外科的治療の中でも“低侵襲ながん治療法”として注目されている。

光線力学的治療(PDT)のイメージ(提供:経済産業省)
光線力学的治療(PDT)のイメージ(提供:経済産業省)
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 この方法論を国際規格として制定されるように企画したのが、経済産業省の支援を受けた東京女子医科大学 先端生命医科学研究所や関連メーカーで、IECへの発案は2015年1月にスタートした。これらの諸団体の地道な努力により、約2年半で正式に国際規格発行に至った。

 世界各国で機器が利用されるためには、各国の法規制に基づき、医療機器としての安全性などの審査が必要となる。その審査基準の前提となる個別安全性の国際規格(IEC 60601-2-75)を日本が提案し発行させた、いわゆる日本発のIEC規格なのである。

 ちなみに、このIEC 60601-2-75の邦訳を試みるなら「光線力学的治療機器の基礎安全性および基本的性能に関する個別要求事項」となる。