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人体を「工学的に見た器官」ととらえる

『見て読んで学ぶ人体解剖生理学』(堀川宗之著、真興交易医書出版部)
『見て読んで学ぶ人体解剖生理学』(堀川宗之著、真興交易医書出版部)

 『見て読んで学ぶ人体解剖生理学』は、堀川宗之氏(東海大学名誉教授)が医学側の視点からとらえた医工連携の教科書的な書籍だ。『医療機器への参入のためのガイドブック』がメーカーサイドから記述されているためのハードウエアと考えれば、こちらは、医療側から見た医工連携のソフトウエア書籍と考えることができる。

 本来、生理学や解剖学は、医療機器が対象とする人体に関しての純粋な医学なのだが、本書はハードたる医療機器に対峙する理論上のソフトという位置付けが強い。具体例を出せば分かりやすいかもしれない。

 例えば、心臓の活動や機能。普通の生理学では、左心室から拍出された血液は、大動脈を経由して全身に送られる、という説明が中心になる。ところが本書では、心臓と血管系からなる循環系について、工学的なシミュレーションが提示されている。もちろん、機械系としてのポンプを中心にしての導管やタンクといった機械系が従来からの理論だが、それに加えて電気系としての電気回路でのシミュレーションも提示されている。この点が、従来になかった新理論であり、この本のオリジナリティーでもある。

 本来的に、医療機器開発は医工連携による共同作業が中心になる。それゆえに、人体という医療機器の対象を「工学的に見た器官」としてとらえなければならない。人体器官という機械的・ハードとは真っ向から対立するような特性を備えた対象を、どのようにして工学的に対応するか、医工連携事業という最も難題の根源は、ここにある。

 したがって、本書のように、医療を工学的にシミュレーションしてもらうと、技術側の人間にとってホッとするような気分にもさせられる。いわば、同類としての安心感とでもいおうか。

 著者の堀川氏は、医学部卒の循環系が専門の医師でありながら、工学部も卒業した異色の人物として知られる。一人で「医工連携」に対応できる特別な存在でもある。本書の副題が「見て読んで学ぶ」となっているとおり、かみ砕いた豊富な図解が特徴。それゆえに、工学側にもじつに容易に理解できる。医療機器開発に携わる技術者にとって、非常に有用な著書といえよう。