PR

「日経メディカル」記者の眼2016年1月15日付の記事より

 地域の医療提供体制づくりは今、大きな転換点を迎えている。2014年6月に成立した「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」(医療介護総合確保推進法)により、都道府県における医療提供体制の確保を図るための計画である地域医療計画の考え方も策定プロセスも様変わりした。

 都道府県は2015年度以降、高齢化のピークを迎える2025年に求められる医療提供体制のあるべき姿を示した地域医療構想(地域医療ビジョン)を策定した上で、その内容を医療計画に反映して実現を目指さなければならなくなった。

 地域医療構想は都道府県ごと思いのままに作っていいわけではない。医療分野のビッグデータをフル活用して、きっちりエビデンスに基づく目標値を定める必要がある。

 日本には現在、医療施設調査、病院報告、患者調査、受療行動調査などの保健医療統計がたくさんある。また、主に急性期病院を対象にしたDPC/PDPS(診断群分類に基づく包括払い制)関連のデータ集積が進んでいるほか、2009年から電子化されたレセプト情報は、「ナショナル・データベース」(NDB)として、国が全て保存している。

 2014年には病床機能報告制度が始まり、一般病床・療養病床を持つ全ての病院・有床診療所は、自院の病棟ごとの医療機能のほか、構造設備や人員配置、各種手術件数などの医療実績を都道府県に報告しなければならなくなった。これによってさらなる医療データの収集が拡充されることになった。

 地域医療構想では、こうしたビッグデータを使って、まずは地域ごとに現状での医療需要の実態を明らかにする。そこに国立社会保障・人口問題研究所が示す将来人口予測を重ねることで、2025年の医療需要を推計して、求められる医療提供体制の目標値を設定するというプロセスを経る。

 地域医療構想の策定・実現を進めていく過程では、市区町村、現場の医療・介護提供者に加え、患者・住民も含めた関係者間で課題解決のための施策を検討していく。国は、地域医療構想のレベルを高めるためには、地域住民の不安やニーズを十分に把握した上で、様々な関係者がそれぞれの視点・切り口から解決策を出し合い、進捗をチェックする仕組みが必要だと判断したのだ。

 データ重視、患者・住民参加のいずれも、従来の医療提供体制づくりにはほとんど入っていなかった視点。その意味で全国一斉に始まった今回の取り組みは画期的であって、筆者はその動向に注目している。