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 先週金曜日(6/24)、東京工業大学で「『医薬×ICT』のフロンティア スマート創薬のイノベーション・技術展望」というタイトルのシンポジウムがあり、取材してきました。デジタルヘルスを医薬品産業、創薬研究開発の中でどのように活用できるのかを主なテーマとするシンポジウムで、実際にデジタルヘルス関連の研究開発に携わっている研究者の他、製薬企業からもバイエル薬品やファイザー、武田薬品工業でデジタルヘルスのイノベーションに関わっている人が登壇したディスカッションは非常に興味深いものでした(日経デジタルヘルスの関連記事)

 全体の議論を聞いて確信したのは、製薬企業の多くがデジタルヘルス分野のイノベーションに非常に強い関心を抱いているということです。ただし、各社それぞれの観点から、それぞれのアプローチ方法でデジタルヘルスの活用を模索していることは非常によく分かりましたが、一方でマネタイズが難しく、事業として取り組む決断をするところまでは至っていない印象です。

 その中で、実用化のシナリオがなんとなく見えているのは治験でのデジタルヘルスの利用です。例えばモバイルデバイスなどを用いて24時間連続でバイタルデータを取得したり、GPS(全地球測位システム)によって従来は取得していなかった情報を取得したりすることで、治験費用を削減できる可能性があるからです。「製薬業界がデジタルヘルスのマネタイズのドライバーになる」といった指摘もありましたが、確かに治験コストを削減するという具体的なメリットを示せれば、デジタルヘルスが事業として浮上するきっかけになることでしょう。

 一方で製薬業界には、デジタルヘルスの活用を模索せざるを得ない必然的な事情があります。世界各国で医療費抑制の圧力が強まり、薬剤費がそのターゲットとなる中で、その医薬品に支払われる価格に経済合理性があることを実臨床データをもって証明していくことが不可欠になると考えられるからです。そのためにも医療ビッグデータを基に、AIを駆使して有用な情報を取り出していく技術を身に着ける必要があるのです。

 もちろん、製薬企業の多くはICT技術にさほど馴染みはないわけですから、製薬企業が単独でというのではなく、モバイルデバイスの技術を持った企業や、データ解析を得意とする企業などと連携していくことは不可欠です。でも、医薬品開発を効率化することを動機として、製薬企業がデジタルヘルス市場に突破口を開ける存在になるというのは、十分にあり得るストーリーだと、シンポジウムの議論を聞いて思いました。