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 今週金曜日(2015年10月2日)までの3日間、日経BP社主催の展示会「ITpro EXPO」が東京ビッグサイトで始まり、その併催イベントである「デジタルヘルスDAYS 2015」が興味深かったので取材してきました。

 展示会場内のセミナールームで行われた「日本健康会議」や「医療等IDと個人情報保護」「弘前大学COI拠点における健康ビッグデータに基づく活動」を紹介する講演はいずれもほぼ満席の状態。会場の一角にある展示やオープンシアターのコーナーにも多数の来場者が訪れ、IT関係者の健康・医療分野に対する関心の高さをあらためて思い知らされました。

 医療や健診はそもそも大量のデータを扱ってきましたが、そこにゲノムのデータや睡眠、食事、活動量などの日常生活に基づくデータを統合して解析すれば、健康状態をモニタリングでき、疾患の兆候をいち早くキャッチして予防などにつなげられるかもしれないと期待されているわけです。もっとも、現状ではまだどんなビジネスがあり得るのか、混沌とした中で関係者が手探りをしているような印象を受けましたが、いずれこうした中から新しいビジネスが立ち上がってくるのだろうと、そんなエネルギーを感じました。

 ビッグデータに関しては、先日製薬企業を取材した際にも面白い話を聞きました。取材したのはバイエル薬品オープンイノベーションセンターの高橋俊一センター長で、同社は昨年6月に同センターを立ち上げて、公募型のオープンイノベーションの取り組みを開始しました。公募による研究助成はドイツBayer HealthCare社が2009年に開始していましたが、日本でも公募を行ったところ、今年7月にグローバルで採択された11件の助成のうち、日本からも1件採択されたということです。

 このオープンイノベーションの取り組みは、基礎的な研究や技術を対象にしたものですが、高橋センター長によると、オープンイノベーションセンターの中にはデジタル技術を対象にしたチームもあって、「例えばウエアラブルデバイスやスマホのアプリなどを用いて、製薬会社として薬以外にも患者にソリューションを提供できる可能性がないか検討している」とのことです。

 高橋センター長がビッグデータ活用を検討している事例として挙げたのが「研究のランドスケーピング」。簡単に言うと、研究者や研究テーマに関して、論文、非論文含めて社内外のさまざまな情報を集積して解析し、新しい研究のトレンドや、将来のシーズを掘り起こすことだそうです。「オープンイノベーションに取り組むに際して、内資の製薬企業に比べて少ない人数で、論文が発表されるよりも前に面白いテーマを見つけていくにはどうすればいいかと考えて取り組みを開始した。今はパイロットスタディーの段階だが、ある程度の感触を得ている。将来的には研究者よりも先取りして、研究のトレンドを予測できるようになれば面白い」と、高橋センター長は話します。

 ちなみに、バイエル薬品では昨年12月にデジタルヘルスイニシアチブというプロジェクトを立ち上げ、その一環としてオープンイノベーションセンターでこのビッグデータを用いた「研究のランドスケーピング」を進めているとのことで、「デジタルヘルスで何ができるか議論する中で出てきた1つの取り組み」なのだそうです。

 いずれにせよ、デジタルヘルスやビッグデータの医療・バイオ分野での利用はまだ手探りのようではありますが、製薬企業の中でもどのようにして活用していくか、模索が始まっているのは確かです。デジタルヘルス、ビッグデータが医薬品・バイオ産業にどのような影響を及ぼしうるか。それを探るためにも、東京ビッグサイトで開催中のデジタルヘルスDAYSをのぞいてみてもいいかもしれません。


本コラムは、バイオテクノロジーの研究者やバイオ産業の関係者に最新の専門情報を届けるメールマガジン「日経バイオテクONLINEメール」に掲載された文章を再編集したものです。日経バイオテクONLINEメールの新規登録などはこちら