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 「なんとか部品を供給してもらえませんか…」。開発する機器は、人工心臓――。

 先日から始まったテレビドラマ「下町ロケット」のガウディ計画編を見て、約4年前に執筆した、あるベンチャー企業による補助人工心臓の開発ストーリーを思い出しました。

国内ベンチャーが補助人工心臓の販売までいかにこぎ着けたのか
【プロローグ】「本当に会社があるんですか?」
【実用化の経緯】「このまま日本で実用化したかった」
【インタビュー】「絶対できる」――それは揺らがなかった

 「下町ロケット」ガウディ計画編では、主演の阿部寛(佃航平)が率いる佃製作所に求められた部品は、技術的に非常に難易度が高いもの。それを開発できる技術を備えているのが“宇宙品質”の佃製作所だ、という設定のようです。

 数年前に、埼玉県の医療機関を取材した際、ある補助人工心臓(前出の記事に出てくる補助人工心臓とは関係ありません)における悩みを聞きました。AC電源が確保できない場所(移動・外出時)で使う2次電池の性能が悪く、補助人工心臓を装着した患者が現実には外出できない実態があったというのです。

 そこで、この医療機関では、標準装備されていた海外製電池を国内製の市販のNi水素蓄電池に入れ替えることで、患者が外出可能な性能を自ら確保したそうです。その有用性については臨床確認し、論文も発表されました。

 これは、下町ロケットで佃製作所に発注したような技術的難易度が高い部品が入手できずに困っていたという話ではなく、現実には市販で手に入る部品で確保できる性能が実現されていなかったという話です。つまり、医療機器向けに部品供給をすることのリスクを回避する国内企業が少なくないことを端的に示した事例といえます。

 もちろん、先日の下町ロケットの放送でも、佃製作所が人工心臓(医療機器)向けに部品供給をすることのリスクを勘案した葛藤については、思いのほか丁寧に描かれていました。

 国内の部材メーカーが持つ優れた要素技術が医療機器に十分活用されていない――。読者のみなさんにとっては「今さら」という構図かもしれません。しかし、こうした状況が、あらためて話題のテレビドラマでクローズアップされる意義は、今後の医療機器産業にとって決して小さくないでしょう。

 これまで医療周辺をテーマにしたテレビドラマといえば、主人公の大半は外科医。ところが、集英社の漫画雑誌「グランドジャンプ」で11月4日号から連載が始まった『ラジエーションハウス』は、なんと「放射線科」が舞台に(関連記事)。そして今回の下町ロケットでは、医療機器開発が主題というわけです。

 日経デジタルヘルスがかねて提唱している医療のパラダイムシフトがドラマや漫画の世界にも広がり始めた!と感じているのは筆者だけかもしれませんが、さほどテレビを見ない筆者も、しばらく毎週日曜日の夜は時間を空けておくことになりそうです。