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 2015年のある日、近所に新しく開業したカフェに初めて行った。そのとき、日替わり珈琲の紹介文に惹かれた。そこには“奥行きのあるコクと重量感”と書かれていた。果たしてそれはどんな味なのか。注文してみた。最初に口に含んだときは、苦味と酸味が混ざった印象。一方、後味は苦味が強く残っているようだ。筆者には、これが紹介文に記載された味かどうか分からなかった。同じ店に別の日に行ったときは「シャープのある苦味とキレのある酸味、アフリカの大地を思わせる」とあった。アフリカの大地というと、雄大な自然が広がり、野生動物がサバンナを駆けるといったイメージを筆者は持っているが、それがコーヒーの味とどんな関係だろうか興味を持った。そこで、好奇心でこれを注文してみたが、正直、先日のものと何が違うのかさっぱり分からなかった。

あるカフェにおける日替わり珈琲の紹介文の例
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あるカフェにおける日替わり珈琲の紹介文の例
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あるカフェにおける日替わり珈琲の紹介文の例

 このように、その店では、日替わり珈琲の味を連想できるように、さまざまな表現を駆使している。そこからは、感情や発想の豊かさや、コーヒー文化を大切にしている様子が伝わってくる。コーヒーの味の違いはなかなか分からないが、その紹介文を見ながら味を吟味するが一つの楽しみになってくる。もっとも、確かにそうした表現には曖昧さがあり、そこに味覚の個人差が重なって、一体なんの味かピンと来ないというのが正直なところだ。

 実は筆者は、前々から食べ物や飲み物の味やおいしさを表現することは非常に難しいことと感じている。どこかでいつも言葉が足りないような気がしていた。筆者の場合は、幸い中国語、日本語、英語が使えるので、それぞれの言語から言葉を選ぶことも可能なのだが、それでもなかなかうまく表現しきれない。言語を限定されたらなおさらだろう。コーヒー豆やワインの売り場では、豊富な商品の中からピックアップした商品を魅力的な表現で紹介している。だが、筆者の場合はかえって頭が混乱させられ、いつもどれを買うべきか迷ってしまう。味の世界は深いとつくづく感じている。