PR

「想定の範囲」外への対応を

 いまだに「ゼロリスク信仰」に基づいて、「想定の範囲」を拡大しようとする試みが散見される。しかし、複雑系の世界において、「想定の範囲」を拡大しようとする試みは常に失敗する。代案としては、やはり「想定の範囲」外の事象が起きたときに、事後策としていかに対応するかを考慮することだ。

<担当者の権限拡大>
 例えば、災害時に1000万円であれば担当者の判断でコストアップ品を調達してもよいとあらかじめ決めている企業はどれだけあるだろうか。あるいは、担当者の判断でまとめ発注をしたり、倉庫残品を押さえておいたりする権限を与えている企業はどれだけあるだろうか。

 多くの企業は、承認や役員決裁に時間がかかり、右往左往していた。その一方で、災害時に限って担当者の決裁権限を広げていた企業は、担当者の判断で調達品を集めることに成功していた。従って、このような事後策を講じることは無意味ではないだろう。「想定の範囲」外への対応が必要だ。

<本当のマルチソース化>

 他社による代替生産も検討の対象となるだろう。樹脂や普通鋼材などは、複数社から購入できるようになっている企業はある。しかし、カスタム仕様あるいは図面買いしているものを2社購買している事例などほとんどない。

 自動車産業に携わっている人は分かると思うが、完成車メーカーの技術者が自ら図面を書くことは(ほとんど)ない。サプライヤーの技術者がCADを操作して図面を作り上げる。完成車メーカーの技術者は、レイアウトや法規を検討することが大半の仕事だ。

 つまり、調達品のほとんどはサプライヤーが設計したものだ。こんな状況にあるのだから、その調達品を異なるサプライヤーから買うなどということはそもそもできるはずがなかった。

 私は、この構造自体を批判しているわけではない。これほど技術が細分化している世界においては、バイヤー企業の設計者が部品設計までできるはずがない。これからはサプライヤーの技術力を活用しなければ製品を作ることはできないのだ。

 それでも大企業であれば、図面供与などの措置でマルチソース化が可能かもしれない。しかし、中小企業がコストを掛けてマルチソース化するのは難しいだろう。中小企業や、その他一般の企業に求められるリスク対応は、より現実的で、より実態に即したものであるはずだ。