PR

実例はいくらでもある

 私だけでなく、見渡せば、そのような実例はいくらでもある。

 分野は違うが、例えばプロ野球の世界。甲子園を沸かせた高校球児がそのままプロになって投手とホームランバッターを両立している選手がいるではないか。この話、最初の内はわけ知り顔の評論家が、二兎を追う者は一兎も得ずとばかりに、どちらかに決めないと、このままでは選手生命も危ぶまれると言っていたのである。

 また、かつて銀行に勤めながら、「シクラメンのかほり」を大ヒットさせたシンガーソングライターもいた。彼は、ビジネスマンとしてのキャリアも積んで、バンカーとしても嘱望されながら多くの楽曲を創出し、その多くがヒットしたのである。

 最近では、お笑い芸人が直木賞を取って世間をビックリさせた人もいた。私も含めて、お笑いタレントにそんな才能はないと思い込んでいた世間の風向きを、ものの見事に変えてしまい、まさにスーパータレントを証明したのである。

 もっと身近には、家事と仕事を両立しているキャリアウーマンもいるではないか。どこぞの政党の、いかにも主婦もやっていますとばかり、持たせた弁当の中身をこれ見よがしに掲載する代議士先生はいかがと思うが、本当にいくつもの課題に取り組み、それぞれに成果を出している人もいる。

 その一人が、業務に励むあまりに虚偽公文書作・行使罪で起訴されながら、その後、無罪となって本省のキャリアに戻って活躍したあの人だ。聞けば、二人の子供を育てながらの奮闘ぶりであったそうな。仕事も裁判も子育ても、同時進行で乗り切ったのだから、唯々、敬服するばかりである。

 彼女を見ていると、人間としても女性としても、そして行政マンとしてのキャリアを積んだうえで、さらにビジネスの世界にチャレンジするという、まさに複数のウサギを追い続けているのではあるまいか。

 ことほど左様に、世の中には二兎どころか、三兎も四兎も追ってちゃんとゲットしている人は多いのである。

 多分、そのような人は三兎にも四兎にもそれぞれに魅力を感じ、もちろん、それなりの才能や技量があったに違いないが、自身の内に秘めた、使命感に似たような気持ちがあったに違いない。

 そして何より、才能があったと言って片付ける話ではなく、そこに渾身のチカラをふりしぼった努力があったということだ。手を抜かず、慢心せず、いつも向上心を持って取り組む信念があったと思うのである。