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 労い(ねぎらい)の挨拶を、相手によって使い分けるのは日本人だけだろうか。目上の人には「お疲れ様です」と言い、目下には「ご苦労様」。同僚同士なら「ヨオッ」や「じゃあね」で済むのであるが、会社の中では微妙な話。とにかく、日本人の上下関係は厄介だ。

 そもそも、お疲れ様ですと言うのも、昔は目上の人に言うのは失礼に当たるという時代があったとか。そう言われれば、上司に対して「疲れているのですね」と言っているようなもので、労うどころか、注意されたと受け取られたら最悪だ。

 また、目上の人を労うということ自体が生意気であり、失礼なことと考えられた時代もあったらしい。目上の人に対してとやかく言うこと自体がよくないことだったのである。

 ご苦労様は、目下の人に対する労いの言葉だが、よくよく考えれば、上から目線がみえみえで、人によっては嫌な気持ちになることもあるのかもしれない。

 よくやっています、頑張ってますねと気楽に言う場合が多いのだろうが、言葉の裏側を勘ぐる輩(やから)も多いのだから、これも誤解されると厄介だ。

 時に、「お世話様」と言うこともあるが、どちらかというとご苦労様と同じ使い方が多いようで、ちょっと上品な感じがしていいのかもしれない。しかし、慣れない者にとっては、世話をした覚えはないとか、世話なんてしたくないと思われたら大変だ。

 どうやら、このような労いの挨拶のはじまりはお殿様で、家来に「ご苦労」と言ったところに「様」を付けて丁寧にしたものらしい。だから、目下の者に対する挨拶になったというのだが、それを知ると、これはまさに上から目線ということであるから、使うのをためらう人も多いのではなかろうか。

 そんな労いの言葉に気を使うより、バリバリ仕事をすればよいと言われかもしれないが、実際に職場での挨拶は大事なこと。むしろ、無言で始まり無言で終わる職場なんて、想像するだけで寒くなる。

 その挨拶を、「お元気様」と言う会社があったから驚いた。最初、何を言っているのか聞き取れないくらいに元気良く、お元気っ様!という感じ。とにかく元気な挨拶である。

 この会社、創業から70年余の計測機器メーカーで、精度と耐久性を大事にしている、どちらかと言えば実直・地味な印象なのだ。だから、お元気様という挨拶は、そんな印象とは結び付かない、意外な感じを受けたのである。

 初めて聞くお元気様は新鮮だし、何より、社内で当たり前に使われているその挨拶がどうしてそうなったのだろうか。こうなると、社長に聞くしかない。