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財務レバレッジでROEを高めてきた

 ではROAは低いのに、なぜROEが高いのか。その理由は、先ほどROEを分解したときに出てきた第2項目にある。

 第2項目、すなわち総資産を純資産で割ったものを財務レバレッジという。「レバレッジ(leverage)」とは「レバー(lever)」から派生した言葉であり、「てこの原理」という意味だ。

 ROEとは、あくまでも株主目線での収益性指標だ。株主にしてみれば、どのような資金の出し方をしても、「儲ける仕組み(=資産)」が生み出す最終利益はすべて自分のものだ。ならば、株主としては「資金を少ししか出さず、あとは多額の負債で『儲ける仕組み(=資産)』を大きくし、その大きな仕組みが生み出す大きな利益は全部いただく」というのがオイシイ。これを「レバレッジ効果」という(図2)。株主自身は大して力を出していないのに、債権者が出した負債を踏み台とする「てこの原理」を使うことによって利益というアウトプットを大きくするということだ。

図2●てこの原理でROEを高めるレバレッジ効果
図2●てこの原理でROEを高めるレバレッジ効果
作成:ブライトワイズコンサルティング合同会社

 図3を見れば分かるように、ソフトバンクは財務レバレッジが非常に高い。これによって、ROAが低いにもかかわらず高いROEを実現しているのだ。

図3●財務レバレッジと自己資本比率の比較
図3●財務レバレッジと自己資本比率の比較
作成:ブライトワイズコンサルティング合同会社

 これを「アメリカ型」と思う人もいるかもしれない。確かに、株主重視を常に謳(うた)うアメリカでは日本以上にROEを重視する。そのため、財務レバレッジも高いイメージがある。一方の日本企業は、「有利子負債」といえば多くが反射的に「圧縮」と答えるくらい借金に対してネガティブなイメージがあり、あまり財務レバレッジを高めようとしない。財務レバレッジは自己資本比率(自己資本を総資産で割ったもの)の逆数なので、財務レバレッジを上げると必然的に自己資本比率が下がる。日本ではそれを嫌う企業の方が多いだろう。

 実際、NTTとKDDIの財務レバレッジは低い。だからと言って、ソフトバンクを「アメリカ型」というのは早計だ。米国企業であるApple社のそれはNTT、KDDIと同程度に低いのだ。

 この事実をどう見るかは意見の分かれるところだ。高すぎるソフトバンクの財務レバレッジは、安全性の面で問題だという見方はあるだろう。NTTやKDDIの自己資本比率は高すぎるとしても、平均して25%程度であることを考えれば、10%台のソフトバンクの自己資本比率はさすがに低い。その大きな原因の1つが、冒頭で述べた11兆円に上る有利子負債だ。

 もう1つの見方として、Apple社は実は極めて普通の会社だという言い方もできる。もともと故スティーブ・ジョブズ氏率いる破天荒な会社であったが、そのジョブズ氏はもういない。それ以前、1985年にジョブズ氏はApple社を一度追われている。それ以降、Apple社は1人のカリスマ型リーダーに依存しない経営の歴史を積み重ねてきた。リスクを取らないところにリターンはないが、安全性を過度に犠牲にするようなこともしない“普通の”会社になったことは十分に考えられる。