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部品の有償支給には明確な会計基準が存在しない

 違法性の判断も難しい。例えば、今回の事件の発端となったインフラ工事の工事進行基準に関する会計処理は、会計基準に何か違反したわけではないので、少なくとも第1の違法性には該当しない。では、第2の違法性に該当するのかというと、そこも難しい。なぜなら、工事進行基準に関する会計処理は、工事進捗度の測定をはじめとして企業の見積もりに大きく依拠するからだ(関連記事「東芝不適切会計の発端となった、見積もり頼りの工事進行基準」)。

 見積もりはあくまでも見積もりなので、事後的にそれが事実と異なっていたとしても、それをもって「企業の経済的実態を表していない」とは言えない。「見積もり当時は、そのように判断した」と言われれば、それまでだからだ。

 前回取り上げたパソコン事業における部品の有償支給についても、それに関する明確な会計基準がそもそも存在しないため、第1の違法性を問うことはできない(関連記事「最終報告書で明らかになった東芝PC事業の露骨な利益操作」)。第2の違法性については、「協力会社に対する部品の有償支給」と「協力会社からの完成したパソコンの仕入れ」という2つの取引が、それぞれ独立した別個の取引だとするならば、部品支給時に東芝が利益を計上すること自体は経済的実態に反していないと言える。

 問題があるとすれば、2つの取引が独立していない、すなわち、完成したパソコンを仕入れるときに、事前に有償支給した部品を100%買い戻すことを企図していた場合だ。この場合、協力会社に部品を有償支給したことで得られた利益は一過性のものに過ぎず、実現した利益とは言えない。

 期末近くに大量の部品を有償支給することによって、売上高を上回る利益が計上されていたのは確かに異常に見える。だが、利益の過大計上が目的ではなく、2つの取引は独立しているという実態に即した経済合理的な理由があったと主張されれば、それまでだ。