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 東芝の会計不正は、結局はガバナンスの問題によるところが大きい。問題発覚後初めての記者会見において、当時の社長だった田中久雄氏(2015年7月21日に辞任)は「内部統制が必ずしも機能しなかった」と述べている。第三者委員会の報告書においても同様の指摘がなされている。巷(ちまた)でも、今後の再発防止策として、内部統制の強化を挙げる声が多い。

 だが、内部統制を強化しただけで東芝のような会計不正は本当に起こらないのだろうか。

経営トップが関与する不正に内部統制は無力

 内部統制とは、経営上の目的を達成するための経営管理の仕組みである。“経営上の目的”は多岐にわたるので、本来の内部統制は必ずしも不正防止だけが目的ではない。だが、上場企業が適用を受ける「金融商品取引法」に基づく内部統制は、会計上の不正防止を目的としている。

 不正防止を目的とした内部統制ではあるが、そこには本質的に超えられない限界がある。その代表的なものは、経営トップの逸脱だ。なぜならば、内部統制とは経営者の経営方針を具現化するために、経営者が経営者のために設計し、作り上げるものだからだ。内部統制を設計、構築した張本人が逸脱してしまったら、内部統制はどうしようもできない。

 カネボウ、西武鉄道、ライブドア、オリンパスなど、会計不正の歴史を振り返ればそれは明らかだ。社会を揺るがした会計不正には、ほとんど例外なく経営トップが関与している。

 東芝の場合、歴代社長は不正の意図を否定しているが、報道や第三者委員会の報告書を見る限り、経営陣が利益目標の達成に対して不当な圧力をかけていたのは明らかだ。出発点となる経営方針が、「無理強いしてでも利益という数字が最優先」ということだったわけだから、内部統制が会計不正を防げるわけがない。むしろ、「経営者の望む利益が上がらなければ、担当者は承認されない」という内部統制が有効に機能したことによって、誤った経営方針が忠実に実行されたのだ。