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要職の派遣で売却後も持分法適用会社に

 今回の株式売却のもう1つのポイントは、売却後に保有する議決権比率だ。Western Digital社を中心とする陣営が売却先の有力候補から外れた一因は、この点で東芝と折り合いがつかなかったためとも言われている。

 メモリ事業は東芝にとっての稼ぎ頭というだけにとどまらず、日本という国の産業競争力を考えた場合も重要なものだ。その特性上、東芝としては一定の議決権比率を確保しておきたいと考えたようだ。

 東芝は今回、東芝メモリの全株式を売却した後、譲受会社に3505億円を再出資する。これによって東芝メモリに対して一定の議決権を保有し続け、同社を持分法適用会社にするとしている。

 再出資する3505億円は東芝メモリの売却総額2兆円の17.525%に相当する。議決権比率が20%に達しないため、これだけでは持分法適用会社にならない。しかし、議決権比率が15%以上あり、その会社の経営方針に重要な影響力を持つ場合は議決権比率が20%未満でも持分法適用会社になる。重要な影響力には、代表取締役や取締役などの要職を派遣することも該当する。東芝メモリの現在の代表取締役は東芝出身者なので、売却後も引き続き要職を派遣することで持分法適用会社にするのだろう。

 持分法適用会社になれば、その純利益の持ち分相当額は東芝の連結財務諸表に加算される。少ない比率ではあるが、東芝メモリは今後も東芝の連結ベースの業績に貢献することになる。

 このほか東芝メモリの取引先である光学機器メーカーのHOYAも、譲受会社に出資する方向と伝えられている。それによって日本企業勢が50%超の議決権を握ることになるようだ。

 将来的には産業革新機構と日本政策投資銀行も、この連合に加わる見通しだ。東芝は前掲のリリース「東芝メモリ株式会社の株式譲渡に関するお知らせ」の中で、東芝の議決権行使に対して指図する権限である「指図権」を産業革新機構と日本政策投資銀行に付与する方針を明らかにしている。これには両者が資本参加するまでの間、参加の前提が崩れるような経営判断を防ぐ狙いがあるのだろう。逆に言えば、将来的に両者が資本参加するのはほぼ確実ということだ。

 これらの施策によって、譲受会社では日本陣営が相当程度の議決権を確保する体制となる。東芝という一企業の支配下からは外れるが、半導体メモリは国としても重要な事業であり、何としてでも日本陣営の支配下に置き続けようということなのだろう。