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 戦後、日本の製造業は品質を重視する経営を推進し、高いグローバル競争力を実現して飛躍してきた。こうした日本の品質関連の取り組みを一貫して支えてきたのが「デミング賞」で知られる日本科学技術連盟(以下、日科技連)だ。日科技連では「第101回 品質管理シンポジウム」(2015年12月3~5日)を「日本の製造業再強化のために品質世界一の確立」をテーマに開催する。日経テクノロジーオンラインは、同シンポジウムの開催に先立ち、シンポジウム登壇者のインタビュー記事を連載する。今回は東レの元副社長で現顧問の田中千秋氏のインタビュー(下)をお届けする。(聞き手は山崎良兵、中山力)

――日本は製造業に頼り過ぎてきたので、今後はもっとサービス業にシフトしていかないという指摘もあります。

田中千秋氏
たなか・ちあき:東レ顧問 1968 年 京都大学大学院工学研究科工業化学専攻修士課程修了後、東洋レーヨン(現東レ)入社。その後、樹脂研究所長、研究開発企画部長、知的財産部長、愛媛工場長、プラスチック生産担当、Toray Plastics (America) 社長、プラスチック事業 本部長、代表取締役副社長CTO、東レバッテリーセパレータフィルム代表取締役会長を経て、東レ顧問。 撮影:栗原克己

田中氏 日本が貿易赤字になって、もう日本は貿易立国でもない。これからサービス業になる。「製造業は頼りにならない」「製造業が日本を滅ぼす」と書いている人までいるほどです。製造業頼みだけではダメでしょうという声もあるのは事実です。

 そんな意見に対するアンチテーゼを打ち出したい。我々は、もっと世界を勉強しないといけません。貿易赤字になったり、今は資源価格が上がっていたりしているという事情もありますが、いくら製造業依存率が下がったとはいえ、製造業があってこそ国が栄えると私は信じています。

 実際、海外の主要国はものづくりに力を入れようとしています。ドイツが一番いい事例ですが、米国も製造業を強化している。英国、韓国、中国もそうです。今や日本の新聞にIoT(もののインターネット)に関連する記事が載らない日はないと言っても言い過ぎではありません。経済産業省もIoTでものづくりを変革しようと言っています。

 IoTを産業構造改革の中核テーマに据えようとしている。ドイツや米国と比べて、日本の動きは遅く、2年くらい遅れているかもしれませんが、ようやく動き始めた。私は以前から問題提起しており、「早くやらないといけない」と主張してきました。

 今までの単なる品質管理に使っている品質を「本当にお客様が何を求めているのか」という視点に立って、ものづくり自体を変えていかないといけない。「Industry4.0」でドイツの姿勢は明確であり、彼らはこのままだと自分たちのコスト競争力では太刀打ちできない。スピードも遅い。ドイツ国内や欧州、さらには世界中から一番安くていいものを迅速に集められる仕組みを作ろうとしています。こうした動きに対抗して、日本は品質の優れたものを造っていくことが大事です。

 これから日本がグローバル競争に勝ちぬくには製造業がしっかりすることが欠かせません。今でも日本は、製造業があってこその加工貿易立国であり、資源が少ない国だからそうしないといけないのです。品質、コスト競争力を高めるのは簡単ではありませんが、品質で勝ってシェアを取り、コストダウンで利益を稼ぐ、そうして得た利益を研究開発に注ぎ込むことで、さらに新しい領域にチャレンジする。これこそが大事な仕組みです。